2.歯科医師の方へ
*管理人より
このHPを開設した2008年ころに比べると、私が治療を受けた歯科医師のほかにも、線維筋痛症に注目したり、あるいは線維筋痛症とのかかわりを念頭に、歯科的治療をしておられる歯科医師のことを耳にするようになりました。
当HPは、まず患者さんの「この治療で実際に回復した」という証言があることを重く考えていますが、上記のように、線維筋痛症に着目した治療を実施しておられる歯科医師の方も、出来る範囲で紹介できればと思っています。
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*「翼突筋除痛療法」について
現段階では、HPで紹介している「翼突筋除痛療法」が行えるのは、福岡市在住の山田歯科医院院長、山田貴志医師のみです。
山田歯科医師は、線維筋痛症を研究する過程で、人体の筋肉を調べる必要を感じ、九州大学元教授で、かつ生理学の権威でもある山本医師の協力のもと、九州大学の生理学教室に長期間通い、解剖実習も含めて全身の筋肉についてこまかく調べたそうです。
山田医師が翼突筋除痛療法にたどりつくまでには、そういう研究過程を経ていて、全身のあらゆる筋肉について非常にくわしく、顎関節をみながら、同時に全身の筋肉を触診して、顎の動きに連動する、それぞれの筋肉の反射作用をみて、トリガーポイントの変化などを触診で掴んで、翼突筋の治療を行っていけるのだと思います。
また、翼突筋から痛み信号が送られ、痛みを感じるのは、全身の筋肉だけではないです。
翼突筋から三叉神経中脳路核、中脳中心灰白質などに送られた信号は、山田医師によれば、後部視床下部にも送られ、そこにある、発熱や筋力低下、睡眠障害などを起こす中枢にも作用して、めまいや発熱、筋力低下などの症状も引き起こします。
そして、翼突筋を治療していくことによって、そういう症状も少しずつ治まっていきます。
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実際に治療を受けてみて、歯にかぶせる1ミリ未満のクラウンや装置の狂いで、痛み、めまい、歩ける距離など、全身に現れる症状に、恐ろしいほどの変化があります。そして、その1ミリ未満の狂いを正しく調整することで、ほんの2、3日くらいで、その痛みやめまいが、劇的に回復します。
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私の場合、最初に使っていた装置に、眼に見えないくらいのわずかなひびが入っただけで、それまで1キロくらいは歩けていたものが徐々に悪化し、約一ヶ月で車椅子でしか動けない状態になりました。その後、装置のひびを修理したら、1週間もしないうちに1キロの距離が歩けるようになりました。
そのほかにも、それに類することは、たびたびありました。装置や仮歯、クラウンのほんのわずかな狂いが、線維筋痛症の症状に、恐ろしいくらいの変化をもたらします。
このように、治療のほんのわずかな加減で、患者の身体に表れる痛みやめまい、重量感などの症状は、ものすごく変化します。
上記の翼突筋除痛療法であれば、患者の身体をこまかく触診して、筋肉そのほかの反射作用や反応をみながら、望ましい位置に翼突筋を誘導していくことが望めますが、しかしながら、もし、そのような反応を見ないまま治療した場合、それがいい方向に向かえば問題ないのですが、もし悪い影響が出たとき、患者の痛みや苦痛は、筆舌に尽くしがたいものがあると思います。
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以下は、HPの「顎関節症と線維筋痛症の関係」の中の、NHK「ゆうどきネットワーク」の採録の部分です。
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「顎関節症には、これまでは上下の歯を削り、噛み合わせを整える治療が行われてきましたが、このような治療で、正常な歯を削ったり、抜いたりすることで、かえって症状が悪化することがよくありました。
九州大学大学院の古谷野潔教授によれば、噛み合わせを永久に変えるような治療に踏み込むと、咬合に違和感が出たり精神的なストレスが加わったりして、問題が複雑化して長引く、したがって、「今は、噛み合わせを永久に変えてしまうような治療は避ける」ということです。
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私自身もそうですが、線維筋痛症を発症した人で、歯科治療を行って、あるいは、歯科矯正を行って、FMの症状が悪化したという人は、実はとても多いです。
この治療法を始めた山田医師の場合は、悪化があった場合でも、すこしずつ調整しながら症状好転の方向に持って行けることが多いようです。私の場合は、悪化したままということはありませんでした。
でも、普通の歯科治療でさえも症状の悪化をもたらすことが多いとすれば、じかに影響のある翼突筋を、翼突筋除痛療法による正確なテクニックがないまま治療した場合、それがいい方向に向かえばいいですが、身体が示す反応を指針としないために症状が悪化したとして、それのリカバリーは、おそらく非常に難しいのではないかと思います。
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上記のような経過をみて、私は噛み合わせのほんのわずかな差で、全身の症状に恐ろしい変化が起きることを身をもって知ったために、今後は口腔のメンテナンスを含め、どんなささいな虫歯治療でも、すべて山田医師にかかろうと考えています。
ほかの医師にかかり、気軽に歯を削られて、精密に合わせた噛み合わせに狂いが生じた場合、取り返しの付かないことになる可能性を感じるからです。
埼玉の私宅から山田歯科医院がある福岡に通うのは、交通費や滞在費を考えれば大きな出費です。しかし一方で、悪化のリスクや、万が一、悪化したときに失う時間、そのときに失うものの大きさを考えたとき、その出費は致し方ないとも思えます。一時のように悪化すれば、その後の人生は、なくなったも同然になってしまいます。
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このように、患者の今後を考えたときには、この治療法がさらに広がることを切望しますが、しかしながら、この治療には正確で精密なテクニックが必要なので、患者としては、この治療法の「生命線」とも言える、正確で精密な治療技術が、さらに正確さを増しながら、広がることが重要だと感じます。
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以下は、翼突筋除痛療法を行っている山田医師からの提案です。
(*以下の文責は、管理人にあります。)
歯科医師の多くは、自分の患者さんのなかに、顎関節症を訴えたり、全身に渡る不定愁訴を訴える人をかなり見ています。そして、そういう医師の方が線維筋痛症の話を聞いたときに、ああ、これがそうか、と思うことが多いようです。
確かに、顎関節症の患者さんの症状は、線維筋痛症とは多くの共通点はあるのですが、しかしながら、深刻な線維筋痛症の患者さんは、そういう症状が極端にひどいわけです。しかし、どの歯科医の方も、そういったひどい状態の線維筋痛症の患者さんは見たことがないです。
本当に深刻になった線維筋痛症患者は、ふつうは歯科医院に行くことはないですから、歯科医師の方が、深刻な状態の線維筋痛症患者を見るチャンスは、まずありません。
たとえば、ひどい肩こりとか腰痛を歯科治療で治したという経験のある医師の方が、これなら維筋筋痛症も治せると思っていたとして、そういう方に、本当に悪化した線維筋痛症患者を見せた場合、「これは別の病気です」「こんな病気は治せないし、歯科治療とはぜんぜん関係のない病気です」ということをおっしゃいます。
つまり、本当に深刻な状態になった線維筋痛症患者は、腰痛・肩こりなどの不定愁訴を伴う顎関節症などとは、まったく別の病態を呈するということだと思います。
(管理人注:これは重症になった線維筋痛症の一患者の私としても、とても納得できます。)
しかしながら、歯科医が、軽い病態も線維筋痛症の一種と考えて、普通の歯科治療で治そうとした場合、症状を、さらにこじらせる危険があります。
「顎関節症」の治療でも、それを治そうとして噛み合わせを変えたり、歯科矯正をすることで、かえって症状をこじらせることが多いということが、報道され始めています。
(「顎関節症と線維筋痛症の関係」のなかの、讀賣新聞の記事参照)
線維筋痛症でも、歯科治療で噛み合わせを変化させたり、歯科矯正をしたりすることで、軽い状態の線維筋痛症の患者さんを、さらに悪化させることがあり得るわけです。
しかも、顎関節症に比べても線維筋痛症は本当に重篤な疾患で、もし治療によって悪化すれば、患者さんの人生は深刻な事態に陥ってしまいます。
噛み合わせや咬合を大きく変化させる歯科治療によって、まかり間違うと、悲惨な状態の線維筋痛症を招く可能性が少なくなく、また、その危険性が、なかなか周知されていきません。
線維筋痛症を治療したいという歯科医師がいることそれじたいは、否定されることではありません。
そういう医師の方は、ぜひ一度、重症の線維筋痛症患者が多く集まる医院で、それがどれほど大変な疾患なのか、その症状の重篤さ、深刻さを理解する機会を持つことをお勧めします。
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管理人注:
私も、線維筋痛症を発症したあと、ある歯科医院で、歯科医が顎に力を加えながら治療を行ったことで、その後、線維筋痛症が非常に悪化しました。強いめまいや重量感、疲労感など、それまでなかった症状が新たに現れ始めました。
ということは、比較的軽症の患者さんが、この辺の知識がないために、みすみす線維筋痛症を重症化させることは、十分ありえる話だと思います。
海外では、顎関節症と線維筋痛症の関わりについて、かなりの数の論文が出され、研究がなされています。(海外の論文のいくつかは、HPの「顎関節症と線維筋痛症の関係」に入れました。)
このあたりの研究が進めば、線維筋痛症の患者さんが、症状をさらに悪化させないために、気をつけるべきことが、わかってくるのではないかと思います。
同じ線維筋痛症でも、比較的軽い場合と、ものすごく重くなってしまった場合とでは、人生も、生きる意味もぜんぜん違ってきます。
私は一時、相当悪かったですが、でも、悪化した患者さんのなかに入れば、私の例はごく一般的で、ありきたりです。私くらいに悪化した患者さんは、ほかにもたくさんおられます。
でも、ほとんどの歯科医師は、悪化した線維筋痛症がどれほどひどいものかということ、また、多くの患者さんが、そういうひどい状態に陥っていることをご存じないということなら、患者としても、そのあたりのことは、ぜひ知っていただければと思います。
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