4.治療後のメンテナンス
大音量で鳴り続ける「ラジオ」(中脳の痛み中枢)
大脳指向型(BOOT)咬合療法は、おおまかに例えると、以下のようにも言えるかと思います。
音量が最大になったままの状態で、壊れてしまったラジオがあるとします。ラジオそのものの修理は、なかなか難しいですが、ラジオに電力を供給している電源を抜けば、大音量で音を鳴らし続けるラジオの音を止めることができます。
この場合の「ラジオ」は、痛み信号を全身に流し続ける「脳の痛み中枢」で、そのラジオ(脳の痛み中枢)に電力(痛み信号)が流れるのをストップさせれば、痛みは止まります。
つまり、ラジオ(脳の痛み中枢)に電力(痛み信号)を流し続ける電源(外側翼突筋)を修理し、ラジオに電力を供給するのをストップする、それによって大音響の音(痛み)を止める、そういった治療とたとえることができるのではないかと思います。
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ただし、治療によって修理(治療)した外側翼突筋も、翼突筋にじかに影響のあるかみ合わせを変化させることで、ふたたび痛んでいく可能性があります。
したがって、治療によって回復したあと、それぞれの患者さんは、長く厳しい治療によって、せっかく望ましい位置に導いたかみ合わせを、ふたたび変化させることは絶対に避ける必要があります。
現在、普通医の四人に一人が線維筋痛症について知らないというデータがあるくらいなので、一般の歯科医で、線維筋痛症について知識のある医師はゼロに等しい状況です。つまり、線維筋痛症を悪化させない観点から歯科治療を行える医師も、ゼロに等しいということになります。
この治療法で、線維筋痛症などの痛みの伴う疾患から回復した患者さんは300人以上おられますが、患者さんが今後、虫歯などの歯科治療を行う場合、外側翼突筋を再び痛めない形で治療を行える医師は、現在、ほとんどいないことが大きな課題になっていくのではないでしょうか。
現在、この治療法を行っている医師が現役を退く前に、患者の歯科治療、あるいは大脳指向型(BOOT)咬合療法を引き継ぐ医師が現れるかどうか、それがこの治療法の大きな課題であると思われます。
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回復した患者には特に大事な口腔のケア
これらの現状を見ても、この治療法で回復した患者さんたちの口腔内のケアは、非常に大事になります。
絶対に避けなければならないのは、治療によって望ましい位置に導いた顎関節、つまり治療後の歯のかみ合わせを変化させること、そして、せっかく治療によって回復した外側翼突筋を、再び痛めてしまうことです。
そのためには、虫歯を作らない、歯周病にならない、すでに歯周病のある患者さんは治療に全力を挙げることなどが必要です。虫歯も歯周病も、かみ合わせにじかに影響するからです。
人生は80年と言われ、老年期に入れば加齢によって歯が抜けたり、歯茎が衰えたりと、当然の変化が現れます。それらの変化を一日でも遅らせるために、一度線維筋痛症になり、この治療法で回復した患者さんの場合は、口腔内のケアは、普通の人の何倍も重要になると思われます。
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ちなみに管理人も、口腔内、つまり歯と歯茎のケアには、非常に手間と時間をかけています。使っている歯ブラシは二種類で、一つは通常のタイプ、もう一つは、一番奥の歯の裏側を磨く、ブラシ部分が三角型のタイプです。
私は治療を始める前の段階で、右上の奥歯が二本、欠損していました。医師によると、私の顎骨の形状から、奥歯のインプラント手術を施すのは不可能とのことでした。したがって、かみ合わせを正しく調整するには重要な位置を占める、奥歯が二本も欠損していることが、私の場合、治療上の大きなハンデになりました。
私の場合は、これ以上、奥歯を一本でも失うと、大変なことになると予想できるので、奥歯のケアには特に気を遣い、普通の歯ブラシが届かないところに届く、奥歯専用の歯ブラシを使っているわけです。
歯間ブラシは、L、M、Sと三種類使い、食事をしたあとは必ず歯磨きをし、一回に最低20分はかけます。
ちょっと聞くと大変のようですが、一時、私は激痛でできた棺桶のなかに閉じこめられ、そこから手も足も出なかったのですから、再びあの棺桶に入らないで済むのなら、このくらいの手間は、お安いものです。
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