おもな症状



 1.管理人に現れた症状
 2.一般的に多く見られる症状
 3.患者の年齢別にみる分布図、発症に影響を与えると疑われる現象など
 4.痛み以外の重い症状
 5.「身体表現性障害」と線維筋痛症
 6.「若年性線維筋痛症」について
 7.線維筋痛症(FMS)と複合性局所疼痛症候群(CRPS)について

 8.放射線被曝と線維筋痛症について
  T.放射線被曝と線維筋痛症―両者は関係があるか
  U.FMと「被曝による健康障害」の共通点
  V.被曝はFMの症状悪化に関係するか

  *被曝を防ぐための対策

 補足:放射能汚染の許容範囲とは

1.管理人に現れた症状

40歳ごろ
顎関節症が始まり、顎が開きにくくなりました。

42歳のころ
徹夜で仕事をしたりすると、背中にそれまでなかった重い鈍痛を感じるようになりました。

44歳
線維筋痛症を発症
*最初はこの疾患を知らなかったので、痛みの原因を探るために、まず情報を集めました。そしてある日、以下の新聞記事を見つけ、この疾患を発症しているのではないかという疑いを持ちました。

日本経済新聞夕刊(2002年2月27日付)
執筆者:天野恵子(東京水産大学保険管理センター教授:当時)

*以下は記事の内容です。

日本では知名度低い線維筋痛症
大学勤務の友人は、40代後半から8年間にわたり、多くの整形外科の門をたたいた。座骨神経痛のような痛みに始まり、ひどい肩こりや身体の硬直、腰痛、首の痛み、腕の痛みに苦しむようになったからだ。
日によって場所や強さも変わる痛みやしびれに苦しみ、知覚も鈍ってきた。日常生活にも支障が出てきたものの、検査では異常が認められない。彼女は無力感を感じつつ、気分転換に夫と米国に出かけた。
その彼女が米国からメールを送ってきた。「こちらの友人から、ある病名を告げられた。調べてもらえないか」という内容だ。米国の女性医学の教科書を開くと、その疾患、線維筋痛症(Fibromyalgia)に1章が割かれていた。
この病気は、欧米の先進国では、リウマチ科でよくある病気と考えられており、診断と治療がかなり確立されていると分かった。主に20ー40歳代の女性の病気で、対人関係と気候が発病のきっかけになりやすい。全身の痛みのほか頭痛、不安感、便通の異常、関節のはれなどの症状も出るという。
彼女もこの病気だった。
ただ、特定の臓器の問題ではなく、検査でもほぼ異常が見つからないため、診断は非常に難しい。
(中略)
この病気は日本リウマチ学会認定医試験の必修項目でもあるが、医療機関での認知は低い。線維筋痛症という病名が市民権を得る日を切に望んでいる。


*この記事に出てくる症状は、当時の私の症状にぴったり当てはまっていました。
日本経済新聞夕刊(2002年2月27日付)

2.一般的に多く見られる症状


痛み
多くの患者さんは、自分の痛みを「身体のなかをガラスの破片が動きまわっているような痛み」「腕がもぎ取られるような痛み」といった言葉で表します。
痛みが生じる箇所は、首、肩、胸から肋骨の部分、腰、腕、手、足、膝など、広範囲に渡ります。(HPの「効果があった理学的療法」の中の、圧痛点のイラストをご参照ください)
また、朝、目が覚めたときに、手の関節や、そのほかの部分がこわばっていることが多く、午前中はこわばりと痛みのために起きあがれないことも多いです。


痛み以外の症状
微熱、全身の倦怠感、睡眠障害、疲労感、頭痛、大腸炎、月経困難症、冷え症、耳鳴り、しびれ、手指のむくみ、知覚異常、目や口の渇き、頻尿など。


心理的、それ以外の症状
抑うつ、不安感、焦燥感、記憶障害など


参考
*厚生労働省が作成した「線維筋痛症の重度分類試案」
(管理人注1:これは試案ですが、患者さんや治療をする方の参考になるかもしれません。)

(管理人注2:線維筋痛症を発症するときは、ステージのTから始まってだんだん重くなるースよりも、発症と同時にステージVの状態が出現するとか、そういうケースが目に付くようです。私自身も、突然ステージVくらいの状態に陥って、その日から歩けなくなりました。)

3.患者の年齢別にみる分布図、発症に影響を与えると疑われる現象など

年齢別の分布図

以下の記事は、2003年11月11日付の内外タイムスです。この中に、患者の年齢別の分布図があります。これによると、患者は50歳代が圧倒的に多くなっています。
また、アメリカ、カナダ、日本で初めて行われた疫学調査のいずれも、女性の有病率は男性の数倍という結果が出ています。いずれの国でも、男性よりも女性の患者さんのほうが圧倒的に多いわけです。

発症に影響を与えると疑われる現象

ア.遺伝
線維筋痛症には、家族性の遺伝が早くから報告されています。
厚生労働省研究班のメンバーで、国立病院東京医療センターに所属していた西海医師は、「一親等内では、女性71%、男性35%に、線維筋痛症の所見が認められたという研究がある」と報告しています。
(西海医師は、管理人が線維筋痛症の確定診断を受けた医師)
ほかにも、発症には遺伝的素因が影響していること示唆する研究も多く見られます。

イ.発症に影響を疑われている事象
線維筋痛症の発症には、人生で経験したさまざまな事象が影響しているとも考えられています。2000年の米国リウマチ学会では、発症に悪影響を与える事象として、以下のような項目が発表されています。

・新生児期の疼痛
・小児期の病気
・幼児虐待
・十代における困難
・多数回にわたる手術
・偏頭痛
・子宮内膜症
・鬱的状態
・過敏性大腸炎
・度重なる外傷
・心的外傷後ストレス障害
・急性外傷
・全身性の炎症性疾患

(上記の出典は、以下の書籍による)
「線維筋痛症とたたかう 未知の病に挑む医師と患者のメッセージ」
2004年出版
発行:医歯薬出版株式会社
監修:西岡久寿樹 聖マリアンナ医科大学教授
難病治療研究センター長
ホールネス研究会著

4.痛み以外の重い症状

痛み以外に現れるさまざまな症状

生まれてから一度も痛みを感じたことがない人はいないと思うので、「痛み」という感覚は、比較的理解されやすいと思いますが、線維筋痛症には、痛み以外にも、さまざまに重篤な症状が出ることが多いです。

それらの症状も、痛みと同様に、患者さんの生活の質とか、あるいは患者さんが望むような社会生活を営めるかどうかに、非常に大きな影響があると思います。もし痛みが軽減したとしても、それ以外の症状がともに改善されなければ、患者の社会復帰はなかなか難しいと思います。

下記に、私に出現した痛み以外のさまざまな症状と、それらが大脳指向型(BOOT)咬合療法によって、どんなふうに改善したかを記したいと思います。

(大脳指向型(BOOT)咬合療法については、HPの「H.効果があった理学的療法」をご覧ください)


*強い眩暈

最悪期の私は、頭を普通の早さで、左とか右に傾けることが出来ませんでした。急に傾けたり、急に右を向いたり左を向いたりすると、地球がぐるぐる回るような強い眩暈が襲ってきました。
立ち上がって歩こうとするときには、まず、肺に空気を詰め、肺を膨らませることで頭の位置を固定し、頭が揺れないように注意しながら、何とか数歩歩くという感じでした。
文字を書くときも、動くペン先を見ただけで、船酔いのように酔ってしまいます。
車椅子で外出するときも、八百屋などの店先から店内を見て、中で人が動くのを見ただけで、酔って気持ちが悪くなってしまいます。
また、さまざまな色彩のものを一度に見るのが非常に辛く、スーパーなどで品物がぎっしり並んでいる陳列棚を見られないので、スーパーなどには入れませんでした。
同じ理由で、新聞のチラシなどを見るのも、とても苦労しました。

動くものを見ると、ものすごく酔うというのと同時に、振動に非常に弱く、車椅子の振動も、車やバスに乗ったときの振動も、電車の振動も、どれも地獄の底に落ちるように、きつかったです。

*重量感

上記と同じ時期、身体を縦にしているのが非常にしんどく、体中に鉛の袋をぶら下げているような重量感がありました。
たとえばタクシーで病院に行くと、その間の車の振動で、症状がさらに悪化しているので、タクシーから転げ落ちるように降りると、そのまま座って地面につっぷしたまま顔も上げられない感じになります。病院の看護婦さんが「大丈夫ですか?!」と駆け寄ってくるまで、立ち上がることすら出来ないという感じでした。
感覚としては、宇宙飛行士が無重力の宇宙から帰ってきたあと、身体にGがかかって身動きが取れないといった感じです。


*疲労感

ちょっとした行動をするだけで、ものすごく疲れます。用意された食事をして、とても疲れて15分横になって休憩し、トイレに行きたくなったので、伝い歩きしてトイレに行って、今度は30分、横になって休憩するという感じでした。
発症する前までは、少しの間もじっとしていられないような、非常にエネルギッシュなタイプだったので、「いったい自分の身体に何が起こっているのか」という感じでした。

*発熱

線維筋痛症を発症してから、両目に白内障と緑内障が出て、眼科で、そのための点眼薬を処方されましたが、その点眼薬を目に差すだけで、微熱が出ました。
緑内障は視野が欠け始める病気で、眼科では、検査のために瞳孔を広げる薬を目に差すのですが、この薬でも発熱し、FMの症状も悪化しました。


このほかにも、睡眠障害、筋力の低下など、さまざまな症状が出ました。
痛みとともに、上記のような重篤な症状が消えなければ、やはり、患者の社会復帰は難しいと思います。
私は、このような症状は、どう考えても脳中枢の異常が原因だろうと思い、脳神経内科のある大規模な病院で、脳のMRIを受けました。しかし、脳には異常は見られないとの所見でした。
また、これらの症状は、「低髄液圧症候群」と共通する部分が大きく、私はこれも疑いましたが、その所見もないということでした。
FMの患者さんに聞くと、やはり上記のような症状が出現する方が多く、私と同じように低髄液圧症候群を疑い、脳のMRIを撮る方も多いようです。
低髄液圧症候群には、「ブラッドパッチ」という治療法が存在するのですが、実際にこれを試してみた線維筋痛症の患者さんもおられるようです。ただし、線維筋痛症に、この治療が必ず適合するとは限らず、よくなった患者さんも、逆に、悪化した患者さん、変化のなかった患者さんも、それぞれおられるようです。

大脳指向型(BOOT)咬合療法を手がけている医師は、上記の症状のうち、重量感、筋力の低下、睡眠障害、微熱については、脳の後部視床下部の結節乳頭核、ヒスタミン駆動性ニューロン系に、その中枢があるという仮説を立てています。(HPの「痛み以外の症状」参照)

こちらの中枢にも、外側翼突筋から三叉神経中脳路核を通じて神経投射があり、それによって上記のような症状が発現する、従って、大脳指向型(BOOT)咬合療法によって、外側翼突筋からの信号が減って行くに従って、上記の症状も改善されるということが考えられるようです。

*現在の状況

私は、痛みが減っていくのと周期を同じくして、上記の症状も、とても改善しました。痛みが減っても、上記の症状がそのまま残っていたら、このHPを作成することは、到底不可能だったと思います。

治療開始から2年4ヶ月後の現在、上記のうち、発熱はほぼおさまり、睡眠障害も、ほぼ正常に戻ったと思います。重量感も、ほぼなくなりました。
ただ、筋力の低下はまだ見られます。
それから、非常に重かった眩暈ですが、相当改善されました。しかし、まだ全快とまではいきません。調子のよくないとき、やはり眩暈はあります。

それからテレビ画面、パソコン画面を見ることも、実質ゼロ時間だったところから、パソコンなら、一日3時間程度なら、こなせるようになりました。
テレビは、まだ、一日2時間以上見ると、翌日、目に来ます。
それでも、全体的に見て、非常に大きな改善といえると思います。
(2009年5月現在)

5.「身体表現性障害」と線維筋痛症

線維筋痛症は、その名の通り、全身に非常に強い痛みが発生しますが、それ以外にもさまざまに多彩な症状が出ます。
これらは多くの場合、医師から「不定愁訴」といった名付けられ方をするようです。
また、線維筋痛症の患者さんのなかには、これまでに、さまざまな体の不具合を、「身体表現性障害」という名前で呼ばれたという方が、かなりおられるようです。

「身体表現性障害」という名前は、患者さん方にも、あまり耳慣れない名前ではないかと思います。専門家が発表した「身体表現性障害」に関する文献を見てみると、下記のようなものがあります。


(日医雑誌第134巻第2号2005年5月)
身体表現性障害の概要(特集身体表現性障害)
宮崎等・北里大学教授(精神科)
(「おわりに」より、一部抜粋)
1. 身体表現性障害はいくつかの疾患をまとめた呼称であり、診断名ではない。
2. 身体表現性障害には身体化障害、疼痛性障害、心気障害、身体醜形障害、身体表現性自律神経機能不全などが含まれる。

私自身は、線維筋痛症が悪化し、複雑で多彩な症状が出てきたとき、これらの諸症状は、おそらく、現代医学の限界を超えているのではないかと思いました。なぜなら、そのどの症状も、それまでの人生で一度も体験したことのないものばかりだったからです。
なぜこんな症状が起こるのか、自分でもまるで不可解で、その原因がまったくつかめず、そのため、どの医師に対しても、何も治療のヒントになりそうなことが言えそうにありませんでした。

翼突筋除痛療法を受ける前、私は、これらの症状が、この治療で回復するとは、まったく考えていませんでした。
ですから、翼突筋除痛療法を続け、これらの症状が徐々に消えていっていると実感したとき、私は驚愕しました。
最悪の頃に私に出ていた痛み以外の諸症状は、およそ以下の通りでした。

(上記の「痛み以外の重い症状」から引用)

*強い眩暈

最悪期の私は、頭を普通の早さで、左とか右に傾けることが出来ませんでした。急に傾けたり、急に右を向いたり左を向いたりすると、地球がぐるぐる回るような強い眩暈が襲ってきました。
また、少しでも動くものを見ると、船酔いのような症状が出るので、悪化したときは、テレビでのスポーツ観戦ができなくなりました。サッカーやバレーボールの試合で、動くボールを見ると、すぐに車酔いのような状態になるため、ボールを目で追うことができなかったからです。
また、「振動」に非常に弱く、車椅子の振動も、車やバスに乗ったときの振動も、電車の振動も、どれも洗濯機にもみくちゃにされるように、まるで地獄の底に落ちるように、きつかったです。

それから、目が、明るさに非常に弱くなり、太陽はもちろん、蛍光灯とか、室内で明るい窓を見ることも苦しくなりました。
同じように、さまざまな色彩のものを、一度に見るのが辛く、スーパーなどで、さまざまな色彩に彩られた品物がぎっしり並んでいる陳列棚を見られないので、スーパーなどには入れませんでした。
同じ理由で、新聞のチラシなどを見るのも、とても苦労しました。
                
*重量感

上記と同じ時期、身体を縦にしているのが非常にしんどく、体中に鉛の袋をぶら下げているような重量感がありました。
たとえばタクシーで病院に行くと、その間の車の振動で、症状がさらに悪化しているので、タクシーから転げ落ちるように降りると、そのまま地面にべったり座り、地面につっぷした状態のまま、顔も上げられない感じになります。
病院の看護婦さんが「大丈夫ですか?!」と車椅子を押しながら駆け寄ってくるまで、立ち上がることすら出来ないという感じでした。
たとえて言うと、宇宙飛行士が無重力の宇宙から帰ってきたあと、身体じゅうに重力がかかって身動きが取れないといった感じです。

*疲労感

ちょっとした行動をするだけで、ものすごく疲れます。用意された食事をして、とても疲れて15分横になって休憩し、トイレに行きたくなったので、伝い歩きしてトイレに行って、今度は30分、横になって休憩するという感じでした。

*発熱

線維筋痛症を発症してから、両目に白内障と緑内障が出て、眼科で、そのための点眼薬を処方されましたが、その点眼薬を目に差すだけで、微熱が出ました。
緑内障は視野が欠け始める病気で、眼科では、検査のために瞳孔を広げる薬を目に差すのですが、この薬でも発熱し、FMの症状も悪化しました。

このほかにも、睡眠障害、筋力の低下など、さまざまな症状が出ました。

私は発症するまでは、忙しい仕事のあいまに北アルブスに登山し、そのあいまに発展途上国関係の学習会を主催し、そのニュースレターを発行、発送し、またその合間に本を何冊も読み、その合間に絵画展に行くといった、少しの間もじっとしていられないようなタイプでした。
なので、上記のような変化を起こしている自分を見て、「いったい自分の身体に何が起こっているのか」と、本当に不可解でした。

私は、これらの、まるで訳が分からないさまざまな症状は、現代医学が対応できる枠を越えているという感じがすごく強かったので、医師に、あまり詳しい説明はしませんでした。
今、考えてみると、もしこれらの症状について、医師に強く訴えていたら、もしかすると私の場合も、医師から「身体表現性障害」の名を告げられていたかもしれないと思います。

ほかの患者さんと同じように、私も、レントゲン血液検査、尿検査、脳のMRIなどでは、異常らしい異常は見つかりませんでした。また、どう考えても異常を感じている私自身の実感にもかかわらず、脳のMRIを行った医師からは、私の脳は、年齢に比べてかなり若いと言われました。
それなのに、なぜこんな多彩で訳の分からない症状が次々と出てくるのだろうと、ずっと底知れないものを感じていたのですが、下記の「中枢感作」の図を初めて見たときに、患者としてとても納得しました。このメカニズムがよく整理されていて、わかりやすいと思いました。

また、翼突筋除痛療法を行っている山田医師から、発熱や睡眠をつかさどる、後部視床下部のヒスタミンニューロン系の説明を聞いたとき、なぜ、この治療が、自分でもまったく不可解だったさまざまな症状、激しいめまい、発熱、睡眠障害、筋力低下などにも効果があるのかが、理解できました。
(これに関する詳しい説明は、HPの「痛み以外の症状」に入れてあります)

翼突筋除痛療法は、この中枢感作のメカニズムを応用した治療なので、複雑な症状のそれぞれが、回復していくことが望めるのだろうと思います。


下の写真は2009年6月8日に撮影したものです。
上記のような状態から回復しました。


6.「若年性線維筋痛症」について

子供の患者さんが対象になる、若年性線維筋痛症については、これまではほとんど研究されてこなかったようですが、厚生労働省では、平成21年度の研究事業の、研究課題疾患の一つとして、「若年性線維筋痛症」を取り上げました。

(参考)
http://www.nanbyou.or.jp/kenkyuhan/syorei.htm
(研究疾患名の36番目「若年性線維筋痛症」)


*研究班
若年性線維筋痛症の診断・疫学・病因・病態の解明と治療法の創出班


*研究代表者
  横浜市立大学大学院医学研究科 発生成育小児医療学・教授 横田俊平

*研究分担者
  島根大学医学部 教授 武井修治
  日本医科大学小児学講座 准教授 伊藤保彦
  大阪医科大学小児科 准講師  ほか


*概要(一部引用)

若年性線維筋痛症は、小児の特異な発育環境と性格傾向に、環境因子が心因的ストレスとして作用し、発症すると推測されている。
生活障害度は著しく、先進国では爆発的に増加し、全身痛、全身倦怠感、睡眠障害などによる登校障害、不登校を認めることが多く、成人線維筋痛症で使用されている鎮痛剤、抗炎症剤や抗うつ剤などは全く無効である。・・・・我が国の専門施設での最近の増加傾向から、推定数2−3000名と考えられる。


*原因(一部引用)

若年性線維筋痛症の臨床像、病態についての検討はまれで、本邦(日本)では皆無である。・・・患児は近年、増加傾向にあり、・・・当施設では脂肪酸代謝に特有の異常を検出し、ミトコンドリア機能低下を示唆する初の知見を得た。したがって、ミトコンドリア呼吸鎖の補酵素ユビキノン、ユビキノールの量的均衡の破綻、ATP産生能低下などの側面から、病因の解明を進めている

若年性線維筋痛症には、成人患者に使われている多くの薬剤は、全く無効であるということで、この研究グループは、2009年の第1回線維筋痛症学会で、サプリメント(ユビキノン、ユビキノール)を使った治療を発表しています。

7.線維筋痛症(FMS)と複合性局所疼痛症候群(CRPS)について

*複合性局所疼痛症候群(CRPS)とは

骨折などの外傷をきっかけにして、慢性的に痛みや発汗異常などの症状が出る、難治性といわれる慢性疼痛の病気です。
線維筋痛症の患者から見ると、CRPSは、線維筋痛症と、よく似た部分が多いです。
症状が似ている疾患は、患者にも参考になる部分が多いと思うので、以下に、CRPS(複合性局所疼痛症候群)がどんな疾患なのか、記述します。

*ちなみに、二つの疾患の英文名は、以下の通りです。

「線維筋痛症」:「Fibromyalgia syndorome:FMS」
「複合性局所疼痛症候群」:(Complex regional pain syndrome: CRPS)

上記のように、両疾患ともに、「syndorome」、つまり「症候群」という名称がつきます。この名称は、両疾患ともに、発症すると、痛み以外のさまざまな症候が、「症候群」として現れるということを意味しているようです。

また、第1回線維筋痛症学会では、大阪大学・大学院・医学系研究科・疼痛医学寄付講座、柴田政彦教授が、このふたつの疾患について、「複合性局所疼痛症候群(CRPS)と線維筋痛症の類似点と相違点」という演題で、特別講演を行っています。

*どんな疾患なのか

複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、まだ、一般的に知られていない疾患名ですが、こういう疾患であるという「概念」が提唱されたのは1986年です。

国際疼痛学会 (International Association of the Study of Pain = IASP) の分類用語委員会が、この年に、複合性局所疼痛症候群( CRPS)という病態の概念を提唱しました。

CRPSに先だって、RSDや、カウザルギーなどといわれる疾患概念がありましたが、これらが整理されて、1986年に、CRPSという疾患名に収れんしたようです。ですが、RSDやカウザルギーの名称は、今も専門家に用いられることがあるようです。

専門家によれば、この「CRPS」は、さまざまに現れる症状の中で、「慢性疼痛」という症状にのみ着目された定義です。

*複合性局所疼痛症候群(CRPS)とは
(研究者による記述・その1)

・骨折、捻挫、打撲などの外傷をきっかけとして、慢性的な痛みと浮腫、皮膚温の異常、発汗異常などの症状を伴う難治性の慢性疼痛症候群

・CRPSの「complex」とは、この病態の患者一人一人において、痛みが増悪する経過中に、臨床症状がダイナミックに、複合的に変化することを意味する。時期によっては炎症症状が主であったり、自律神経症状、皮膚症状、運動障害、さらにジストロフィーが発生するということである。


*管理人:注

上記の「痛みが増悪する経過中に、臨床症状がダイナミックに、複合的に変化する」は、線維筋痛症も、悪化すると多彩な症状が出てくることとの類似を感じます。

またその一方で、上記の「ジストロフィー」は、「萎縮」を意味しますが、この「萎縮」は、通常、線維筋痛症では見られません。
CRPSの痛みは、線維筋痛症の痛みのように、身体のあちこちに移動することはないという患者さんの話もあり、CRPSには、線維筋痛症とは異なる症状もあるようです。
ただし、治療が奏功し、筋痛が減ると、CRPSなど、外傷後に起きた症状の軽減にもつながるという話もあります。


(出典および参考)
HP「痛みと鎮痛の基礎知識」より、一部引用
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/pain.html



CRPSとはその名が示すとおり様々な病態が複合していると考えられ、様々な原因が考えられているが、発生機序のひとつとして中枢神経系の機能異常が考えらており、近年、脳イメージングを用いた研究によって様々な知見が報告されている。



*管理人・注
上記の「CRPSにおける知覚異常の広がりには中枢神経系の関与がある」という記述は、線維筋痛症が「中枢神経の機能異常」という海外の指摘と共通点があるようです。

*海外の論文

海外には、二つの疾患の関係に言及した論文もあります。以下に、その一つを一部引用します。

「線維筋痛症の謎(The Mystery of Fibromyalgia)」
(J Amer Chiropr Assoc(JACA) 2004 Jun;41(6):10-20)
訳:栗原輝久;パシフィック・アジア・カイロプラクティック協会理事

「前略・・・Dr.Evansによれば、線維筋痛症候群の潜在的な原因として注目すべきもの、・・・には以下のものがある・・・何が(線維筋痛症の)原因なのか?」
 
その4.疼痛調節障害

(以下、一部引用)
「・・・これは、線維筋痛症は、中枢神経の障害だろうということを示唆している。この説は、線維筋痛症は神経系‐主に(感覚信号を適切に伝達する)大脳辺縁系‐ の障害の結果だというものである。
本質的に、これは患者が経験している事を脳へ求心性に伝える際に、誤って報告してしまうことであり、そして信号伝達を妨害しているこの問題は、軽い接触でも患者が強い疼痛を知覚するということを意味している」(Dr.Evans)。

「また多くの研究は、この病因がかつては反射性交感神経性ジストロフィー(RSD) として知られている、複合部位の疼痛症候群の現れであるという学説を探求している。
線維筋痛症患者にはRSDの一形態がみられること、そして四肢のどれか1つに関する限り、線維筋痛症の客観的な所見と主訴は、両方とも、RSDの徴候と同様のものであると、研究者達は示唆している。この所見と主訴は、四肢の非常に大きな筋群に現れることがある」(10)


*管理人:注
難しいですが、上記をわかりやすく言うと、およそ以下のような感じではないでしょうか。

「線維筋痛症は、RSD(現在は、CRPSの一形態と理解されています)という疾患によって引き起こされる症状の一つという学説がある。
線維筋痛症に関しては、医師からみた所見と、患者が訴える症状は、ともにRSDにみられる兆候と同じであると研究者たちは示唆している、これは、患者の手足の筋肉のいずれにも現れることがある」



*論文「線維筋痛症の謎(The Mystery of Fibromyalgia)」
(J Amer Chiropr Assoc(JACA) 2004 Jun;41(6):10-20)

出典:

http://www.asahi-net.or.jp/~xf6s-med/jchiro.html
(Chiropractic in Japan)
カイロプラクティック・イン・ジャパン

翻訳:
栗原輝久;パシフィック・アジア・カイロプラクティック協会理事
栗原カイロプラクティック研究所所長
http://www7b.biglobe.ne.jp/~kenkouchiropractic/

*厚生労働省では、2009年12月より、「慢性の痛みに関する検討会」の開催を始めています。上記の大阪大学大学院・柴田教授は、この検討会の構成員でもあります。患者としては、この検討会を含め、慢性疼痛に関する研究が進むことを願います。

「慢性の痛みに関する検討会」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/s1210-1.html
(慢性の痛みに関する検討会の開催について)

*「線維筋痛症」も慢性疼痛が現れる疾患のひとつとして、議事録中に出てきます。




8.放射線被曝と線維筋痛症について

2011年3月に、福島第一原子力発電所で、きわめて深刻な放射能漏れ事故が発生しました。放射能の汚染状況をみると、原発の近くだけでなく、関東や東海地方、関西やそれ以東にまで汚染は広がっているようです。

これから、日本は嫌でも、事故によって多量に放出された放射能とつきあっていくことになります。事故によって放出された放射線核種には、半減期が長いものも多く、私たちは今後、長期間にわたる被曝の影響を考えていく必要があると思います。

でも、長期の被曝については、人類がまだ多くの経験をしておらず、これが健康にどんな影響を及ぼすかについて、十分な研究がなされていません。放射能による被曝が線維筋痛症の発生や憎悪と、どんな関係があるかについても、研究はなされていません。ですが、研究が十分に進むまで、患者はただ待っていられません。

研究論文がなくても、現時点で手に入る資料を参考にして、線維筋痛症と放射能被曝はどんな関係があるか、また、患者は放射能とどのようにつきあっていけばいいか、少し考えてみたいと思います。

T.放射線被曝と線維筋痛症―両者は関係があるか

医学的にはまだ検証がなされていないものの、放射能による被曝は、線維筋痛症とまったく無関係ではないと思います。

基礎医学書「線維筋痛症とそのほかの中枢性疼痛症候群」(Fibromyalgia & Other Central Pain Syndromes)」の第5章に、下記のような記述があります。

中枢感作症候群(中枢性過敏症候群)の患者は、痛みの広がりがあるのは当然として、感覚異常や不快感もあり、さまざまな刺激に対する疼痛閾値(いきち)や疼痛耐性は、いちじるしく低下している。
温度、臭い、音、化学物質等の環境からの刺激はもちろん、・・・さまざまな末梢への刺激に対して、「過敏性」という(中枢感作に特有の)臨床所見を示す。

原発事故で放出された放射線物質も自然界にはない異物ですから、脳中枢が過敏になっている線維筋痛症患者には、これも「刺激」である可能性はあると思います.

FMの患者は、「たとえ少ない刺激でも、長く続くと症状が憎悪する」ことが多いです。今回の事故は、「低線量の被曝が長期に渡る」ことが予想されます。低線量被曝がFMにどのような関わりがあるか、たとえ研究が十分でなくても、用心するに越したことがないと思います。

U.FMと「被曝による健康障害」の共通点

放射能に被曝し続けると、癌や白血病の発症など、さまざまな健康障害が出ることが分かっています。一方、線維筋痛症の特徴として、重症になると、普通では考えられないような多種多様な症状が出てきます。

このふたつには、いくつかの共通点がみられます。

一つは、「同じ量の(被曝)刺激を受けた全員が、同じように発症するわけではない」ということです。

  共通点1:  感受性が強い人とそうでない人がいる

被曝によってさまざまな健康障害が出るか出ないかには、個人差があります。
つまり、同じ量の被曝をしても、被害が出る人と出ない人がいるということです。
FMも、同じ刺激を受けても発症する人とそうでない人がいます。何人かが同じ量の刺激を受けたとして、全員が発症するということはなく、刺激への感受性にも個人差があります。

  共通点2:  検査で異常が出ないことがある

「原爆ぶらぶら病」について

被曝すると癌や白血病を発症することはよく知られていますが、ほかにも、被曝によって健康被害が生じることがあります。
そのひとつが「原爆ぶらぶら病」です。
広島長崎で原爆が投下されたあと、しばらくしてから、たくさんの人が体に変調を感じ始めました。
かれらは血液検査や尿検査をしても異常が検出されず、そのためになまけ病や詐病ではないかと言われました。
これが「原爆ぶらぶら病」です。

自分自身も被爆者である広島の肥田舜太郎医師は、「内部被曝の脅威」(ちくま新書)のなかで、この「ぶらぶら病」 を以下のように紹介しています。

「(被曝した人たちの中で、)病院で検査を受けてもどこも異常がないと診断され、それでも病気がちで身体がだるく、仕事に根気が入らず休みがちになり、それゆえ家族や仕事仲間から怠け者というレッテルを貼られ、様々な悩み、不安の中で生きていた人たちがいる」

日本の民医連は、国連に出した報告書「広島・長崎の原爆被害とその後遺」で、「ぶらぶら病」を以下のように定義しています。

1・被ばくによって様々な内臓系慢性疾患の合併が起こり、わずかなストレスによって病症の増悪を現す。

2・体力、抵抗力が弱く「疲れやすい」「身体がだるい」「根気がない」などを訴え、人並みに働くことが困難。

3・意識してストレスを避けている間は病症が安定しているが、何らかの原因で一度病症が増悪なると回復しない。

4・病気にかかりやすく、かかると重病化する、等。

一方、FMも通常の検査ではほとんど異常が発見されないことは周知の通りで、この点も共通点しています。
また検査で異常が発見されないために、ぶらぶら病もFMも、日本の医学界の認知が非常に遅れている点も共通しています。

  共通点3:  ぶらぶら病と線維筋痛症・慢性疲労症候群・・酷似している症状

上記を読めば分かるように、この「ぶらぶら病」は、慢性疲労症候群や、線維筋痛症の症状と酷似しています。

「ぶらぶら病」は、高い線量による被曝だけでなく、低線量被曝によっても起こると言われます。
長期に渡っての低線量被曝は、今の多くの日本人にあてはまりますが、残念ながら、この低線量被曝は、チェルノブイリ事故が起こるまでは、あまり注目されてきませんでした。

「ぶらぶら病」は、原発労働者や原発近くの住民にも多発しているといわれ、一部の医師や専門家のあいだで注目されてきましたが、残念ながら、検査で異常が出ないこともあり、病気としての認知が進まないため、被曝と「ぶらぶら病」の因果関係を統計的に調べた研究はほとんどありません。
同じように、FMと被曝との関係を探った研究もありません。今のところ、FMとぶらぶら病は症状が酷似しているということは言えると思います。

                          

  *興味深いトピックス

FMと放射能被曝との関連を考えたときに、以下のようなことも興味深いです。

FMの近隣疾患である慢性疲労症候群には、レトロウイルスの感染が関係しているという説がありますが、原水爆実験が盛んだった1950年代に生まれた子供に、レトロウイルスの感染者が多いことが最近わかってきています。
このウイルスに感染すると、「倦怠感があり、疲れやすく、微熱が出て、やる気が失われる」という症状が出ます。

(出典:「内部被曝の脅威」・ちくま新書、2005目6月発行:140ページ)

*興味深い「湾岸戦争症候群」

被曝などによって発症した「湾岸戦争症候群」も、線維筋痛症と多くの症状が共通しています。

1991年におこなわれた湾岸戦争のあと、放射能を含むさまざまな化学物質に晒された米国兵士にさまざまな健康被害が出ました。
これが「湾岸戦争症候群」です。以下、参考になる本から引用します。

「二〇〇三年十一月二十二日。
ジャパン・タイムズ紙は独立系の民間研究機関「ウラニウム医療研究センター(UMRC)」の所長・アサフ・ドラコビッチ博士による「湾岸戦争症候群の実態」についての記事を掲載した。
ドラコビッチ博士は当時アメリカ国内で問題になっていた「湾岸戦争症候群」の治療研究を担当、その結果、帰還兵たちの体が高レベルの放射能に汚染されている事実を発見した軍医だ。(中略) 
同論文で報告されているのは以下のような調査結果だ。(中略)

「湾岸戦争は、大気中に最低でも三百五十トンの劣下ウラン粉塵を放出した。
その結果、(劣化ウランによる体内被曝によって)」〈湾岸戦争症候群〉という複雑で進行性のある多器官系疾病を引き起こしている。
症状としては、通常の生活に支障をきたすほどの疲労や筋肉骨格関節痛、頭痛、
精神神経疾患、情緒変化、錯乱、視覚の問題、歩行異変、記憶喪失、
リンパ節症、呼吸器官機能障害、性的不全、尿路形態機能変質などである。

(出典:「もうひとつの核なき世界」堤未果著:小学館 2010年12月発行:149ページより)

  共通点4:  患者は、女性のほうが男性よりはるかに多い。

よく知られているように、線維筋痛症は、女性が男性の数倍多く発症します。
被曝による健康被害にも明らかに性差があります。
健康被害が出るのは、女性のほうが男性よりはるかに多く、男性の数倍にのぼります。
(理由として、女性の方が男性よりも免疫機能が弱いからという研究があります。)
また、大人よりも子供のほう影響が大きく、やはり男児より女児のほうが放射能の影響を強く受けます。
女児は男児の4倍、放射能に対する感受性が強いと言われています。

V.被曝はFMの症状悪化に関係するか

これは、患者さんならみな興味のあるところだと思います。
いまのところ、これに絞った研究は見あたりませんが、たとえば、癌に罹患して放射線治療や化学療法を繰り返し受けたあと、FMあるいは中枢性過敏症候群の症状が出た人はかなりいるようです。

これは、癌にかかった精神的ショックやストレスが関係している可能性もあると思いますが、一方で、放射線や化学物質による刺激によって、脳中枢の過敏化が引き起こされた可能性も考えられるように思います。

もう一つ私が思い出すのは、「黒い雨」という映画です。
先日亡くなった田中好子さんが、原爆症を発症した女性を演じました。
映画の中で、ヒロインは髪が抜けたり、倦怠感などが出たあと、最後には、ものすごい痛みが全身に出て動けなくなります。映画を見ていて、私は線維筋痛症に似ているなあと思いました。
原爆症で苦しんだ方は、症状が進んでくると、体に痛みが出た方が多かったようです。

今回の原発事故では、すでに発症している患者さんへの心配だけでなく、今後、私たちのような疾患が増えるのではないかという危惧を抱きます。

被曝によって、白血病や癌、甲状腺障害や脳障害、心臓障害など、さまざまな健康障害が発生することが指摘されている一方で、FMや、慢性疲労症候群との関係に関しては、まだ本格的な研究がなされていません。研究が進めば、被曝とFMとの関連が今より明らかになるかも知れません。
ですが、患者はそれまで待てないので、今は、できるだけ被曝しないことが大事だと思います。

*被曝を防ぐための対策

1.住まいやまわりの線量を知り、危ない場所には近づかない。

一般的にいえることですが、できれば自分で線量を測り、安全な場所を選び、危ない場所には近づかないことが大事です。
そして、さまざまな工夫で被曝を減らして生活することはできます。

FM患者は身動きすらできないことも多く、以下の作業は難しい場合もあると思います。
身近な方に作業を代行してもらうなど、工夫が出来ればいいなと思います。

2.誰にでもできる除染作戦

出典:原子力専門委員会委員・中部大学、武田教授のブログ

http://takedanet.com/

*放射性物質は、埃に含まれて流れてきて、雨などに叩かれ地面に落ちます。放射性物質が含まれた埃は、火山灰のイメージでとらえることができます。火山灰が落ちたら、雑巾などで拭き取ったり、ブラシをかけて水で流したりすると思います。放射能埃も、同じようなイメージで少なくすることが出来ます。
1) 家の中の徹底的な拭き掃除。家具や道具も水で拭き取る。

2) ベランダ、玄関、家の前などをモップやデッキブラシでこする(水を使って流す。黄砂を流す感じでゴシゴシこする)

3) ご近所と一緒に、みんなで道路にデッキブラシをかけて、水で洗い流す

以上が基本です。余裕があれば、以下の作業に移ります。

4)庭を中心に、植木鉢、庭土の表面を薄く取って入れ替える。

5)雑草を徹底的に抜く

(雑草が土の中から放射性物質を取り込んだのではなく、空気中の放射性物質が雑草の上にのって、そのままくっついている)

6)庭木、花などの葉に水をかけて、できれば丁寧に拭き取る。

7)雨樋、落ち葉の吹きだまりについては個別によく見て、普通なら黄砂や火山からの灰などが吹きたまるところの、雨水や土、落ち葉などを慎重に取り除き、あるいは土を広く薄く取り除く.これは、かなり高い放射性物質を含むことがある。

8) 雨樋の下や吹きだまりはしばらくのあいだ注意をして、泥などは取り除いておく。

*これらの作業をするときは、ビニールの手袋をして、マスクをしましょう。

やや水を多めに使います。

放射性物質は、「拭くことでとれる」のは有名です。

*ぞうきんなどは、よく水で洗い流し、終わったら、手袋と一緒に捨ててください。

これらの作業を行うと、我が家の場合は、線量がおよそ0,03から0,04くらい下がりました。
翌日に測ると、室内の線量も少し下がります。


除染をイラスト付きで説明しているブログ

「できることから、はじめたい」イラスト付き「放射能を少なくする家そうじ」

http://eminakae.exblog.jp/12809789/

3.食物による除染法

原爆による被曝から生き延びた方の経験談も、参考になります。

長崎に原爆が投下されたとき、爆心地から1.8kmの場所で、病院内で被曝した70人全員が、原爆症の発症もなく、助かった例があります。

聖フランシスコ病院医長だった秋月辰一郎博士は、被曝した人に、塩をつけた玄米のおにぎりを毎日食べさせ、塩辛いみそ汁を飲ませました、
その結果、70人全員が助かり、命を長らえました。

この経験を記した「長崎原爆体験記」は、英訳版が欧米で出版され、そのためチェルノブイリ原発事故のあと、ヨーロッパで日本の「味噌」がとぶように売れたそうです。

このように、化学的な食品添加物が加えられていない「無添加の自然醸造味噌」は、放射能を体から出す効果があると言われています。
(大豆発酵食品に含まれる「ジビコリン酸」が、ストロンチウム90などの放射性物質を体外に排出する効果があると言われます。)

同じ大豆発酵食品である「納豆」も効果があるといわれます。
チェルノブイリ原発事故の後には、日本から現地にたくさんの納豆や味噌が送られました。

玄米も同様の効果があり、これに含まれている「フィチン酸」にすぐれた解毒能力があり、玄米常食者は熊本県水俣市でも「水俣病」にかからなかったと言われています。また、玄米の常食者は、広島・長崎の爆心地から2km前後にいた方々でさえ、原爆症になった方はほとんどいないといわれています。


  他に良いといわれる食材

海苔、わかめ、昆布など「ヨード」を含む食品

線維筋痛症の場合が、食材そのものが刺激になる場合もありえます。
判断はそれぞれでお願いします。

(出典:秋月辰一郎著 「長崎原爆体験記」・「死の同心円−長崎被爆医師の記録」講談社刊・こちらは絶版 )

*参考:以下のブログに、放射能を少なくする食べ物の紹介があります。

「できることから、はじめたい」放射能を少なくする食生活

http://eminakae.exblog.jp/

補足:放射能汚染の許容範囲とは

ICRPは1年に1ミリシーベルト

ヨーロッパ放射線リスク委員会ECRRは、0.1ミリシーベルト

*放射能汚染の許容範囲は、世界におもに二つあります。

日本が準拠しているICRPは、1年に1ミリシーベルト、ヨーロッパ(ヨーロッパ放射線リスク委員会ECRR)が推奨する基準は、その10分の1で、年に0.1ミリシーベルトです。

日本はいま、ICRPの基準を使っていますが、私は健康を考え、将来的は、ECRRが推奨する基準(1年―0.1ミリシーベルト)を採用するべきだと思います。

日本では、原爆が投下されたあとに発症した原爆症の認定を巡って、患者側が国を訴える原爆症集団認定訴訟が行われてきましたが、この裁判を見ると、ICRPの基準では、広島・長崎で、原爆投下から時期をおいて大勢の原爆症患者が生まれたことの説明がつかないことが分かります。

この裁判では、原告側である患者が実質的に勝訴しています。

琉球大学名誉教授の矢ヶ崎克馬教授は、その理由について、ICRPは内部被曝の影響をカウントしていないから、と言っています。

内部被曝は外部被曝よりも影響がずっと深刻であり、それを考えた場合、被曝はなるべく低く押さえるべきだと思います。

2011年5月1日の国会質問では、民主党の森ゆうこ議員が、年間の被曝限度についてECRRの基準を持ち出し、「こういう基準もあるし、この基準を使うべきではないか」という発言をしていました。

今後はぜひ、その方向に進むことを願います。

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