1.線維筋痛症のおさらい(治療に関係する箇所を復習します)
(論文抜粋)
(参考資料)
*管理人である私自身は、この大脳指向型(BOOT)咬合療法によって、劇的に回復することができました。
しかしながら、最初に書いたように、この治療ができる医師は限られており、しかも、非常に手間のかかる治療法のために、一度に多くの患者を受け入れるのは難しいです。
ただし、この治療法には、線維筋痛症の発症や悪化、さらにはそこからの回復について、さまざまな示唆を含んでいると思われるので、内容について詳しく載せます。
ここで、いま一度、研究者の間でコンセンサスになっている線維筋痛症のメカニズムについて、復習をしたいと思います。
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線維筋痛症についての復習
線維筋痛症は、脳のなかの痛みを感じる感受性の部分が変化を起こし、身体の各部分には異常が起きていないにもかかわらず、患者自身が激しい痛みを感じる疾患です。身体には異常が起きていないのに、患者が激しい痛みを感じるのは、末梢にある痛みを感じる感覚受容器から、痛みの中枢に至るまでの痛みの伝達経路(つまり痛み信号の上り経路)のどこかに、異常が起きているからだと考えられています。
人間の脳は、大きく分けて大脳、中脳、小脳の三つがあります。そしてそのうちの中脳部に、痛みを伝達するときの感度を調整するべき機能の中枢が存在すると考えられています。
感度を調整するというのは、およそ次のようなことになります。痛みの信号が流れる伝達経路を「川」に例えるとします。その川を流れる水の量を調節する「水門」の機能を担っているのが、痛みの伝達感度の調整機能ということになります。
もし水門の口を締めれば、川(伝達経路)の中を流れる痛み信号の量は少なくなり、口を開ければ、川(伝達経路)を流れる痛み信号の量が増えるわけです。
その水門にあたる機能を担っているのが、痛みの伝達感度の調整をする中枢ということになります。そして、この中枢を担っているのが、中脳中心部にある中脳中心灰白質(PAG)だと考えられています。(中略)
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さきほどの水門の例えに戻りますと、水門を閉める機能を持つのが、「下降性疼痛抑制系」開ける機能を持つのが「興奮性の系」ということになります。
(中略)
そして、この痛みの伝達感度の調整をする中枢、つまり、下降性疼痛抑制系は、「中枢感作」に深く関わっているものと考えられています。
そして、身体には異常なことがなにも起きていないのに、患者が激しい痛みを感じるのは、痛みの中枢に至るまでの痛みの伝達経路(つまり痛み信号の上り経路)のどこかに異常が起きていると考えられているのは以上に述べたとおりですが、つまりそれは、人間の中脳部にある、痛みを伝達するときの感度を調整するべき機能が、上手く働かないということになります。
なぜ、この感度調節機能がうまく働かないで、いわば暴走してしまい、神経経路の中に痛み信号が多量に流され続け、結果として患者の身体に耐え難い痛みが起こるのかについて、いまのところ原因は不明とされていますが、人体のどこかに、いわば「原発病巣」があって、その場所から慢性的に、痛み中枢への上りの信号が流れ続け、その結果として、患者の身体に耐えがたい痛みが起こっているという可能性が指摘されています。
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治療を行っている医師の論文抜粋
私が回復した大脳指向型(BOOT)咬合療法は、上記の説明にある「原発病巣」に着目し、この原発病巣は、「外側翼突筋」(下記イラストC,D参照)であるという着目に基づいて編み出された治療法です。以下は、この治療を行っている医師の論文からの抜粋です。
「私(医師)は、線維筋痛症の患者のほぼすべてに口腔顔面痛が認められるために、口腔領域にこの原発病巣が存在するのではないかとの考えた。
口腔顔面痛の最も頻度の高いソースは外側翼突筋であることは、筋筋膜痛症候群の発見者であるDr Simonsが指摘しており、多くに認められているが、外側翼突筋近傍に浸潤麻酔を行う処置により、線維筋痛症の症状が改善した。
そこで、外側翼突筋が線維筋痛症の原発病巣ではないかという考えに基づいて、大脳指向型(BOOT)咬合療法が考案された。」
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(イラストC:咀嚼にかかわる筋肉)

(イラストD:咀嚼にかかわる筋肉、横顔)
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外側翼突筋が、線維筋痛症の原発病巣であるという着眼についての参考資料
参考(1)
ケネディ元大統領の主治医だったトラベル博士は、下記の著書のなかで、この外側翼突筋について次のように紹介しています。
「Travell&Simons Myofascial Pain and Dysfunction The Trigger Point Manual」(トラベル博士&サイモン博士「筋筋膜症候群と反作用:トリガーポイントマニュアル) 」上巻:第11章。P379
(内容)
我々の臨床によると、外側翼突筋のトリガーポイントの痛みは、頭蓋(とうがい)および顎領域に感じる痛みの主要な原因である。
*上に掲げた論文にもあるように、筋筋膜痛症候群の発見者であるDr Simonsは、口腔顔面痛の最も頻度の高いソースは外側翼突筋と指摘しており、これは多くの臨床例で認められています。
参考(2)
外側翼突筋は、頭部の他の筋肉と同様に脳神経に支配されていて、外側翼突筋に分布する求心性線維(痛みの上り信号)の細胞体は、中脳にあるという特長がある。さらに、外側翼突筋は、全身の骨格筋のなかでただ一つ、筋紡錘がないという特徴を持っている。
注:筋紡錘:身体の多くの筋肉に存在し、ことに肩胛骨筋はこれに富む。内臓筋には存在しない。
*大脳指向型(BOOT)咬合療法を行っている医師によれば、外側翼突筋近傍に浸潤麻酔を行うと、線維筋痛症の症状は改善する。
なぜ、外側翼突筋近傍に浸潤麻酔を行うと線維筋痛症が改善するのか。外側翼突筋のみに、ほかの骨格筋には所在する筋紡錘が存在しない事実をこの臨床例と照合すると、興味深い点がある。
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