治療の組合わせ



 1.脳中枢への治療 × 末梢の筋肉への治療

 2.治療の組み合わせ(脳中枢への治療×末梢の筋肉への治療)
 2−1.外側翼突筋への浸潤麻酔注射、およびスーパー・ライザー照射
 2−2.トリガーポイントブロック
 2−3.トリガーポイントブロック注射の実際
 2−4.腹式呼吸法
 2−5.温泉の効果

その他.食事療法(現在、記事を作成中です)
1.脳中枢への治療 × 末梢の筋肉への治療

肩や背中などの張り、凝り、痛み

全身の痛みが、中枢感作のメカニズムによって発生するものであっても、やはり、腰や肩、背中などの個々の筋肉には、治療側が触われば分かるような変化が起きています。具体的には、それぞれの筋肉が緊張し、凝りや張りがあったり、固くなったりしています。そういう変化が起きることによって、患者さんはさらに強い痛みを感じる場合もあります。

脳中枢への治療を行うのと同時に、抹消の筋肉への治療を組み合わせることによって、より治療効率をあげ、結果として、治療期間の短縮をはかれるようになる可能性もあると思います。

中枢性の痛みの場合、脳中枢への治療によって、末梢の筋肉に反射作用が起こります。

具体的には、外側翼突筋を変化させることによって、緊張していた末梢の筋肉がゆるんだり、張りや凝りが取れたりします。患者さんが横になった状態で、外側翼突筋を変化させてみると、寝ている患者さんの左右の足の長さが微妙に違っていたのが、修正されるとか、左右どちらかに傾いていた肩が平行になったり、肩と床のあいだにある隙間を覗いてみると、肩と床の距離が左右不対照だったのが、左右対称になったりします。
このように外側翼突筋を変化させることで、中枢の反射作用が起こり、末梢の筋肉が修正されます。
このように、脳中枢への治療を進めることによっても末梢の筋肉はゆっくりと回復していきますが、それぞれの筋肉が自律的に回復するのを待つのと同時に、張りや凝り、痛みを起こしている筋肉に直接働きかけることによって、その箇所の痛みや凝りが楽になったり、痛みが楽になる効果が望める可能性があります。


また、管理人は、食事療法でかなりの治療効果をあげたという医師の方から資料をいただいています。
非常に重い化学物質過敏症を発症し、ついで線維筋痛症の諸症状も併発した患者さんから、この食事療法でそれなりに回復したという話を聞いており、いただいた資料を整理して、記事にまとめたいと思います。(現在作成中)

なぜ、食事療法が線維筋痛症に効果があるのかについて、まだ、詳しいメカニズムは明らかになっていないと思います。
ただし、感覚受容器に入力された痛み信号が脳に伝達され、そこで増幅され、全身に痛みが供給されるというメカニズムを考えれば、食物からの何らかの刺激が、痛み信号として身体に入力され、それが脳に伝わると仮定できるのかもしれません。
そう仮定すれば、痛み信号の入力につながる要素を食事から除去することで、信号の入力を押さえるという効果が期待できるのかもしれません。
いずれにしろ、詳しいことは今後の研究が待たれるところです。

2.治療の組み合わせ(脳中枢への治療×末梢の筋肉への治療)

脳中枢への治療と、末梢の筋肉への治療の組合わせ

筋肉への治療をもっと具体的に言うと、筋肉のトリガーポイントへのマッサージやブロック麻酔注射、針治療、オステオパシーといった治療になると思います。
しかし、これらの治療も、線維筋痛症のことをよく理解し、治療を受ける患者の身体の状態をよく把握している治療者にかかることが望ましいのではないかと思います。

「トリガーポイント」については、下記の「2−2.トリガーポイントブロック」で詳しく説明しています。

*脳中枢への治療(大脳指向型BOOT咬合療法)と組み合わせられ、あるいはその治療単独でも、ある程度の効果が望めるものを、下記にいくつか上げたいと思います。


2−1.外側翼突筋への浸潤麻酔注射、およびスーパー・ライザー照射
2−2.トリガーポイントブロック
2−3.トリガーポイントブロック注射の実際
2−4.腹式呼吸法
2−5.温泉の効果


2−1.外側翼突筋への浸潤麻酔注射、およびスーパー・ライザー照射

上記のうちの、「外側翼突筋への浸潤麻酔注射」は、大脳指向型(BOOT)咬合療法を行っている医師が、2007年の第1回線維筋痛症研究会で発表した治療法です。

この浸潤麻酔注射は、「脳中枢への治療」と平行して行うことができます。
ちなみに、私の場合は、「脳中枢への治療」(HPの「H。効果があった理学療法」で紹介した治療法です)を始めたころは、この浸潤麻酔注射を打っても、自覚的な効果はほとんど感じなかったのですが、「脳中枢へ治療」が終了したあたりから、この麻酔注射の効果をかなり感じるようになりました。
この浸潤麻酔注射は、翼突筋へのスーパーライザーの照射と平行して行うことができます。

外側翼突筋へのスーパー・ライザー照射については、HPの「スーパー・ライザーについて」をご参照ください。

私の場合は、脳中枢への治療が終了した頃から、浸潤麻酔注射を1ヶ月に1度、ないし2度ほど行ってみました。
効果としては、身体が、より楽になるのを感じるのと同時に、何かのはずみに症状が悪化したとき、注射を打つ前に比べて、悪化の度合いが少なくて済むというか、症状が底堅くなってきている感じがします。

2−2.トリガーポイントブロック

トリガーポイント

「トリガーポイント」とは、いったい何でしょうか。

このHPのなかでは、「中枢感作」のメカニズムに沿ってFMの痛みを説明していますが、2009年に放映されたNHKの「ためしてガッテン・慢性痛・徹底対策2」に、「トリガーポイント」が原因で発生する痛みについて、視聴者にもよく分かるような説明があったので、このページでは、その流れに沿って、トリガーポイントによる痛みと、その治療について説明したいと思います。
版権その他の問題があるので、「ためしてガッテン」のなかで参考にした部分と、このHP内で書いていることとを、分けたいと思います。

(以下は「ためしてガッテン」を多く参考にしています。)

線維筋痛症に限らず、肩や腰に、どんな治療をしてもよくならないような「慢性痛」を抱えている人の身体を調べてみると、そのような痛い箇所とは別の場所に、触るとこりこりと手に触れるものがあります。
このこりこりしたものは、長い時間無理な姿勢を続けたりして、筋肉が長いあいだ、異常な状態を続けた場合などに、神経がその間、ずっと痛み信号を発し続けることで発生するものです。長時間にわたって神経が痛み信号を発し続け、その異常な興奮状態がおさまらなくなり、その神経のまわりの筋肉がしこり状になったものが、トリガーポイントです。


トリガーとは「引き金」

トリガーポイントの「トリガー」は引き金という意味であり、トリガーポイントは引き金を引いて痛み信号を脳に送り、実際に痛い場所とは別に、「トリガーポイントによる痛み」を生じさせます。
実際に痛む場所の痛みは、そこをもんだり暖めたりすることで楽になりますが、トリガーポイントが脳に引き金を引いて生じさせた痛みは、そのような治療では取れないということになります。

そして、さらに大きな刺激を受けたり、慢性化が進行した場合は、身体にできたトリガーポイントも、さらに激しい興奮状態に陥ります。すると、たくさんの痛み信号を受け取った脳は混乱状態に陥り、脳が、痛み信号が送られてきた場所を、間違って判断してしまいます。その結果、本当に痛む場所とは違う場所を、痛いと感じてしまいます。
「もんでも暖めても治らない頑固な痛み」のほとんどは、脳の錯覚による痛み、つまり「幻」だったということになります。


トリガーポイントをほうっへおくと、さらに厄介なことに

トリガーポイントをほうっておくと、日常の動作だけで激痛を引き起こします。さらに恐ろしいケースとして、軽い腰痛を放っておいたら、上半身に痛みが広がり、腕が上がらないほどに悪化してしまった人もいます。
なぜこういうことが起こるかというと、本来、幻の痛みだったはずの場所に実際に筋肉収縮が起こり、その結果として、新たにトリガーポイントが発生することがあるからです。つまり、トリガーポイントが新たなトリガーポイントを生み、痛むか所が広がって行くことがあります。
(ここまでは「ためしてガッテン」を参考にしました)


一方、大脳指向型(BOOT)咬合療法では

このHPの「効果があった理学的療法」に書いたように、この治療法は、人の咀嚼筋である外側翼突筋から、中脳の痛み中枢へと送られている痛み信号をブロックすることを主眼としています。

このページの「3−1」で書いた、「外側翼突筋への浸潤麻酔注射」は、翼突筋に発生しているトリガーポイントに麻酔を打つことで、下記に記すように、痛みが楽になる効果が期待できるということでしょう。
HPの「効果があった理学的療法」で書いたように、大脳指向型(BOOT)咬合療法は、この外側翼突筋が線維筋痛症の原発病巣であるという着眼から、ここから脳に送られ続けている痛み信号を、ブロックするという治療です。

噛み合わせの変化などで翼突筋が痛み、この筋肉がそのまま痛み続けることによって、翼突筋から脳へと、継続的に痛み信号が送られ続けていると仮定します。
その結果、「たくさんの痛み信号を受け取った脳は、混乱状態に陥り、脳が、痛み信号が送られてきた場所を、間違って判断してしまいます。その結果、本当に痛む場所とは違う場所を、痛いと感じてしまうのです。」(上記)ということになるのではないでしょうか。

そして、その結果として、
「本来、幻の痛みだったはずの場所に、実際に筋肉収縮が起こり、その結果として、新たにトリガーポイントが発生することがあります。つまり、トリガーポイントが新たなトリガーポイントを生み、痛むか所が広がっていくことがあります。」(上記)ということになれば、実際に身体に発生しているトリガーポイントへの治療も、痛み治療として有効ということになるでしょう。

ただし、私が実際に、トリガーポイントブロックを行っている医師、あるいは、この治療を受けた患者さんなどから聞いたお話によると、このトリガーポイントを見つけるにも、それなりの熟練が必要ということがあるようです。
「トリガーポイントブロックで腰痛は治る!」(風雲舎・2009年出版)の著者である加茂淳・加茂整形外科医院院長は、著書の中で、
「筋肉に関しては、医師よりも整体師や鍼灸師のほうが知識が豊富ということも少なくありません」
「かなりの医師がトリガーポイントという言葉じたいを知らない・・・トリガーポイントブロックを知らない医師にかかれば、行き違いが日常茶飯事」と言っています。
トリガーポイントブロックについては、経験や知識が豊富な医師に治療を受けることが望まれるようです。


トリガーポイントブロックとは

(以下は、「ためしてガッテン」HPを参考にしています。)

トリガーポイントブロック注射の効果は三つあります。
1.痛みそのものを取る。
2.神経が興奮し、血行を悪くしているため、それを鎮める。
3.痛み物質が作られて、それが筋肉を強ばらせているため、それを洗い流す。

つまり、「痛みが発生する→血行が悪くなる→筋肉が強ばる」という悪循環が起こってしまっているため、麻酔を打つことにより、その循環を経ち、痛みを楽にします。

治療について
・週に一度の治療を、5回くらい続けるといい。
・このトリガーポイント注射は、保険適用になり、1回800円程度。(診察料などは別)
・注射針は、血管注射に比べて細いので、大きな痛みはない。
・トリガーポイントへの鍼治療も、効果があることがある。
(管理人注:ただし、鍼治療も上記のように、熟練とか経験が重要なようです。)

トリガーポイントは主にどこにできるか

(以下も、「ためしてガッテン」HPを参考にしています)

トリガーポイントは、パチンコ玉からウズラの卵くらいの大きさで、背中の肩胛骨に沿ったあたりに多くでき、しかも、肩胛骨の中央部に多くできるようです。
それから、腰の痛みの場合は、背中の真ん中、そして臀部上の左右の腰付近です。

(管理人注:これらの場所は、線維筋痛症患者の多くが痛いと感じる箇所と、共通していると思います。ちなみに私も、もっとも辛いのは肩胛骨の中央部、背中の中央、それから臀部上の左右の腰付近でした。)


参考:
NHK「ためしてガッテン・慢性痛・徹底対策2」(2009年3月4日放映)番組ホームページ

参考及び出典:
「トリガーポイントブロックで腰痛は治る!」
(加茂淳・整形外科医院院長著、風雲舎・2009年出版)

2−3.トリガーポイントブロック注射の実際

*BOOT療法を手がけている医師は、治療の一環として「翼突筋への麻酔浸潤注射」を行っています。
これは、翼突筋のトリガーポイントブロック治療ともいえ、これによって、筋肉の強ばりが解けたり、痛みが楽になったりといった効果が望めます。

また、「トリガーポイントブロック」のページで書いたように、身体のあちこちに発生する慢性疼痛への治療としては、トリガーポイントブロック注射が、かなりの程度、痛みが楽になる効果が望めるようです。
私は、この治療によって、かなり痛みが楽になったという複数の患者さんから連絡をいただいていて、また、この治療を行っている医師から、治療の実際についてHPに載せる許可をいただいたので、この治療の実際について、下記に載せます。

ただし、この治療によって、一時的には楽になる効果が望めますが、痛みの再発は、ままあるようです。このあたりの事情は、筋肉へのマッサージ治療、また、針治療などとも共通するところがあるようです。

それから、慢性痛への治療として、筋肉そのものに着目した治療は、わりあい新しいものに属するようです。こういう事情のために、「トリガーポイント」の言葉自体を知らない医師も多いという話もあり、また、このポイントを見つけるには、それなりの熟練が必要ということがあるようです。針治療に関しても、同じようなことがいえるようです。

また、同じ「トリガーポイントブロック注射」を標榜する治療でも、効果的な治療を受けられずに症状が悪化したという患者さんの話を伺ったこともあり、できれば、筋肉やトリガーポイントへの治療に関して、知識や経験の豊富な医師に治療を受けることが望まれるようです。

以下は、「トリガーポイントブロックで腰痛は治る!」(風雲舎・2009年出版)の著者である加茂淳・加茂整形外科医院院長が、HP、および著書の中で公開している治療例です。

治療の実際(加茂式トリガーポイントブロック)

TP(トリガーポイント)ブロック注射の基本
・筋肉の圧痛点に、27ゲージの細い注射針で、0.5%の「メピバカイン」や「ネオビタカイン」(局所麻酔剤)を注射する。
・注射針の針長は、19ミリと38ミリ。
・局所麻酔剤の量は、1箇所に1−3ミリリットルくらい。
・注射針の深さは、触診しながら浅層筋、深層筋など、痛みを感じている筋肉の位置を想定して決める。(著書によれば、このあたりは熟練が必要なようです。)
また、注射する箇所が圧痛点なのか、痛みが別の場所にも走るトリガーポイントなのかを探りながら注射する。

*この注射には、細い注射針を使うので、注射する際の痛みは、比較的少ないようです。また、局所麻酔剤はもっとも安全な薬剤の一つで、妊娠中の患者さん、高齢者の患者さんでも、また繰り返し使用しても、不安はないということです。

実際の治療例

(治療を行った患者さんの症状の変化を、加茂医師の著書とHPから、一つずつ記します。)

*Aさん(女性、50歳代)
義母が亡くなったあと、腰痛、両下肢痛のために10メートルの歩行もできなくなった。
発症後、半年経過した時点での加茂医師による診断:
膝より上の多くの箇所に、圧痛点と関連痛があり、厚生省による「線維筋痛症の重症度分類試案」によれば、「ステージV・・・痛みのため普通の生活が困難」に該当。
うつ状態に合併した「線維筋痛症」タイプの「多発筋痛症」ともいえる。
治療:
1.抗うつ剤のデプロメール(SSRI)を処方
2.トリガーポイントブロックを施術
治療効果:
約二ヶ月で体調は回復し、歩行も普通に出来るようになった。
デプロメールは最大量100ミリグラムで、1年後には25ミリグラムに減らした。
症状は大幅に改善され、1年後の診断では、「ステージT・・・痛みはあるが、日常生活に重大な影響を及ぼさない」まで改善。

(「トリガーポイントブロックで腰痛は治る!」から出典)

*荒木さん(男性、39歳)

最初、整形外科で頸椎ヘルニアと診断され、翌月に腰椎間板ヘルニアと診断された。一時は会社を休み、保存療法による治療をしたが、8時間以上座る姿勢が取れなかった。
一時はあまりの痛みに、ただ生きているだけという感じだった。睡眠障害、慢性疲労の症状もあった。
加茂医師による診断:
広範囲の線維筋痛症と診断した。
治療:
入院し、トリガーポイントブロックによる治療を開始。
治療効果:
退院後、4ヶ月で仕事に復帰。体調は問題なく、首、下肢の痛みもない。ときどき腰部が痛くなり身体が傾いてしまうことがあったが、最近は一度もない。
トレドミン(抗うつ薬/SNRI)、ガバペン(抗てんかん薬)、デパス(抗うつ薬)を使っていたが、最終的にはすべてやめることができた。

*加茂医師の言葉
何度もMRIを受け、ヘルニアと診断された患者さんを診察してみると、「線維筋痛症」と思われるケースがしばしばある。

(加茂整形外科医院のHP/「線維筋痛症」から出典)
アドレス: http://junk2004.exblog.jp/i33/

*加茂淳医師の略歴
金沢大学医学部卒業
富山県中央病院、石川県立中央病院にて、整形外科医として研修。
加茂整形外科医院を開業。同院長。
整形外科専門医、リウマチ専門医、心療内科登録医。


*管理人注:

すべての方が、このような順調な回復ができるとは限らないと思いますし、実際に、効果があったという患者さんがおられる一方で、思わしくなかったという患者さんもおられるようです。

線維筋痛症が、中枢感作のメカニズムによって引き起こされる疾患であるとして、それではさまざまな刺激のなかで、どの刺激が、より強い痛み入力につながり、それが中枢感作によって増幅されるかは、患者さんによって違うようです。

なかには注射による刺激が、大きな痛み信号として、身体に入力されてしまう患者さんもいるようです。そういう患者さんのなかには、TPBによる痛み軽減効果が、注射による痛み入力によって相殺されてしまい、思うような効果が出ないという方もいるようです。

注射をした痛みがとても大きく感じられ、その後、その痛みが増幅して全身に供給されるような感じがある場合には、その後のTPB注射は、ようすを見た方がいいかもしれません。
線維筋痛症でも比較的軽症の方や、あるいは、注射による痛み入力がそれほどではない方は、TPB注射によって、かなりの痛み除去効果を感じることが多いようです。

また、今のところは、TPB注射が上手く適合しない患者さんでも、ほかの治療で症状がさらに軽減してくれば、TPB注射が適合するようになる可能性もあるかもしれません。

*トリガーポイントブロックは、「急性痛」の治療にも有効

突発的に痛み出す、いわゆる「急性痛」の治療は、なるべく早い段階での痛みの遮断が重要といわれていて、このトリガーポイントブロックは、この急性痛の治療としても、大きな効果があるようです。

痛み始めた早期の段階で、鎮痛治療などによって痛みの遮断が出来なかった場合、それが慢性痛に移行してしまうこともままあるようで、このあたりは、脳の可塑性(脳は痛みを学習してしまう)という機能のために、そういうことが起こってしまうようです。
2003年共同通信「最新医療情報」によれば、「痛みの信号が中枢神経に入るのを即効性の鎮痛剤や局所麻酔薬で遮断するのが有効な対策」「鎮痛剤の最初の一錠は、できるだけ早く、が基本。たとえば、抜歯なら、治療の前に服用する」のが有効ということが紹介されています。


参考および出典

「トリガーポイントブロックで腰痛は治る!」
(加茂淳・整形外科医院院長著、風雲舎・2009年出版)

加茂整形外科医院のHP/「線維筋痛症」

2003年・共同通信社
「最新医療情報・慢性疼痛の対策が可能に、半場道子さんに聞く」

2−4.腹式呼吸法

腹式(デルデル)呼吸法について

この呼吸法には、患者にとって、以下のような有利な点があると思います。

1.痛いときや疲れたときなど、いつでもどこでもできる。
2.薬剤を使わないために、化学物質過敏症を併発している患者さんもできる。
3.一度覚えると習慣化できるので、ほかの治療でよくあるように、治療を止めると再発することなく、痛みを継続的に楽にできる可能性がある。
4.治療費を抑えることができる。

当HPに治療法を載せる基準としては、まず医師側の情報ではなく、患者さん側の「確かに効果があった」といった証言があるということを重視しています。
この呼吸法によって確かに効果があったという患者さんの証言と、その内容をHPに転載する許可をいただきましたので、この呼吸法を、記事として載せます。
この線維筋痛症の患者さんは、精神科医の方です。
(文意がわかりやすくなるように、原文を若干直しています)

この呼吸法で症状が軽くなった患者さんの話

FMS患者の精神科医Sです。
デルデル呼吸(荒木医師の提唱する呼吸法)を何度も実践しました。
その結果、全身のこわばり(特に夜に強くなります)が、ほとんど無くなりました。
痛みも、トータルでは減ってきているような印象です。他にも鍼灸院に通っており、その他、トリーガーポイント治療のカイロプラクティック(整体治療)にも通っています。
その効果もあるのだと思いますが、明らかに、呼吸法を始めてから楽になっていることを実感しています。
この呼吸法は、うつにもいいようです。

私の他にも、現在入院中の重症の寝たきりの線維筋痛症の患者さんにやってもらったところ、見違えるように元気になっています。(具体的には、歩けるようになり、ボタン付きのシャツなら、着替えも自分一人で出来るようになりました)。
また、外来で、交通事故の被害者の方で、PTSDで体が硬直してしまい、FMSのようになった方がやはり劇的な改善を示しています。

また、私の母親が、10年以上にわたり、大腸憩室(数十箇所から数百あるようです)のために、アロエの粉を飲み、ようやく細い下痢状の排便をしていたのですが、アロエを飲まなくても、呼吸法を始めたら、毎朝、きちんと排便ができるようになりました。このために旅行にいけると喜んでいます。

呼吸法を数日間、試してみて、もし効果が出なくても、しつこくやり続けることが大事だと思います。寝たきりの患者さんは、何度か挫折しそうになりましたが、絶対よくなるからと励まして、呼吸法だけは頑張らせました。それに、気持ちの良さを味わえれば、頑張らなくても、自然に呼吸をするようになると思います。

管理人自身の体験

この呼吸法については、上手下手があり、上手にできる人とできない人では、効果に差があるようです。
たとえば私は、最悪時、普通に呼吸をするだけで、背中や脇腹、あばら骨に激痛が走る状態でした。
私の場合は激しい痛みをこらえるために、無意識に浅く呼吸をする癖がついてしまっているようで、なかなか上達しませんでした。

健康な人には信じられないかも知れませんが、悪化してくると、本当に呼吸するだけで背中や脇腹が激しく痛み、呼吸するのでさえ、辛いです。そういう状態の人に、この呼吸法はなかなか難しいかもしれませんが、覚えて、決して損はないと思います。
私自身は、かなり痛みが残っている時点でこの呼吸法を試してみて、当時の2割くらいは痛みが減った感じがありました。
もしうまくいかなくても、上記の精神科医の患者さんのように、繰り返し行うことによって、だんだん効果が出てくるかもしれません。


呼吸法のやり方(管理人がデモ治療で習った内容)

まず、平らでリラックスできる場所に、仰向けに寝ます。枕は、自分で心地いい高さにします。次に、膝をゆったりと立てます。体重を、すべて寝ている床に預けるような感じにします。息は控えめに、ゆっくりと軽く吸ったり吐いたりします。
手を重ねて、へそより少し下の位置に重ねて置きます。(イラスト1参照)そして、手を重ねた位置に、意識を持ってきます。すると、息を吸うと、手を重ねた位置が少し膨らみ、吐くと、少しへこむ感じが分かります。そういうふうに、お腹が膨らんだり、へこんだりする感じを、じっくりと味わいます。
(イラスト1)

胸で息をするのではなく、お腹でゆっくりと息ができていることを確認します。次に、脇腹のところに手を持ってきます。すると、脇腹も、息を吸うと、ふくらみ、吐くと元に戻ります。その感じを確かめます。そのまましばらく、吸って、吐いてという呼吸を繰り返します。(イラスト2参照)
(イラスト2)

その次に、ウエストの後ろに指を当てて、ふーっと軽く息を吐きます。そして、脇腹とウエストの後ろがかるくしぼむことを確かめます。さらに力を抜くような感じで、ふーっと息を吐きます。吐き終わったら、脇腹とウエストの後ろが膨らむのを感じながら、自然に息を吸います。
息を吸うより、吐くほうを、より意識します。深く吐くことを意識し、力を使わずに、力を抜いて息を吐きます。(イラスト3参照)
(イラスト3)

医師によれば、これを行っていくことで、全身の血流がよりスムーズに流れ始めるということです。また、腸のなかが動き出すのが自分で分かります。呼吸法を繰り返し行うことで、便通がよくなる可能性が、実感できます。

この呼吸法について、さらに詳しく知りたい方は、下記の荒木先生の著書をご参照ください。


「やせる!デルデル呼吸ダイエット」
http://www.makino-g.jp/bookdetail/isbn/978-4-8376-7078-0/

「おなかすっきり心すっきり腹横筋を使ったお通じ改善法」
http://www.niheisha.co.jp/isbn4-86108-023-1.htm

*荒木隆次医師の略歴

1975年 九州大学医学部卒業。同精神医学教室、産業医科大学を経て、医療法人松尾病院副院長。現在は「あらき心療クリニック」院長。

2−5.温泉の効果

温泉について

せっかくの治療でも、薬剤や注射針の刺激などが痛みの入力につながり、それが体の中で増幅されてしまう場合もあるようです。
また、患者さんによっては、温度やクーラーの冷風や大きな音など、ほんの些細な刺激が、体の中で増幅してしまうこともあると思います。
そういうなかで、温泉で身体を温めるのは筋肉を暖めることにもつながり、痛み軽減効果が望めることもあると思います。
翼突筋除痛療法は、できる医師が限られていますが、今、スーパー銭湯型の温泉が普及していて、これを利用できる患者さんは多いのではないかと思います。
私自身も確かに温泉の効果を感じるので、下記に私の経験を記します。

*ただし、水分が体につくことが刺激になるという患者さんもいますし、また、心臓に問題を抱える方の中には、温泉そのものが負担になるという方もいます。
温泉を利用される場合も、あくまでも自分の体に相談されながら利用されるのがいいと思います。

(管理人の温泉の利用)
*第1回目(2006年7月から8月ころ)

当時は、私の最悪期でした。歩くこと、車の運転、パソコンなど、まったく何もできない状態でした。
発症した2001年からその当時まで、どんな治療をしても悪化の一途を辿っていて、2006年の春、最後の手段として、「ダメもとでいいから」山田医師の治療を受けてみようということになったのでしたが、
それにしても、当時の私は、新幹線も飛行機も、乗ることじたいができませんでした。
猛烈な痛みがあるのと同時に、たとえ痛みが我慢できても、ささいな振動に、ものすごく弱く、とくに、速度がつく乗り物に乗ると、洗濯機にもみくちゃにされたような凄いめまいが襲ってきて、発狂するのではないかと思うくらいに辛く、速い乗り物に乗れる状態ではなかったからです。
せめて新幹線に乗れなければ、福岡に移動することもできませんでした。それまで日光浴などで身体を温めると、いくらか楽になることがわかっていたので、何とか福岡に移動できる体調にしようと、2006年の7月、8月と、車で毎日、温泉に連れて行ってもらいました。

毎日、温泉に入り、また、じりじりと太陽が照りつける日に、温泉に付属している庭で、バスタオルをすっぽりとかぶって30分から1時間程度、じかに日光を浴びました。
それまで数年間、寝たきりが続き、24時間ずっと痛いために、夜も寝られず、一日のリズムが作れず、しかも全く動けないため汗もかけず、自律神経が完全におかしくなっていた感じでした。
当時は、直射日光を浴びても大して汗もかかず、健康な人なら日光を浴び続けられないような酷暑の日に、30分以上、屋外で寝ていても大丈夫でした。逆に、そうやって身体を温めると身体が楽になる感じなので、温泉に入り、真夏の太陽をしばらく浴びるということを毎日繰り返しました。

その結果として、その年の9月に、家族二人に介助してもらい、新幹線の席を二人分取ってもらって、そこで横になりながら、福岡に移動することができました。
あれほど恐れていたもの凄いめまいは、体を温めることで抑えることができたと思います。それでもやはり、福岡に着いてから、1週間くらいのあいだ、発熱し、嘔吐感に苦しみました。


(効果)
この時期でも、確かに温泉の効果はあったように思います。ただし、痛みの軽減にはまったく役に立ちませんでした。

第2回目(2008年7月から10月まで)

翼突筋除痛療法が最終段階に入ってきて、翼突筋やそれに付随するさまざまな組織が変化を起こしているためか、調子がよくなく、医師に、「今の時期、温泉に入ると効果がある」と言われ、毎日のように温泉に通っていました。
2年近く続いた治療の結果、その当時は歩くことには不自由はなかったので、徒歩20分くらいの温泉は、ちょうどいい散歩コースでした。

(効果)
確かに痛みを軽くする効果がありました。
当時の治療で使っていたスーパーライザーPX(HPの「スーパーライザーについて」を参照)もなかなか効果があり、温泉とスーパーライザーは、痛みを楽にする効果は同じくらいの感じでした。

*温泉に浸かっているときは、外側翼突筋のあるあたりを両手で暖めていました。当時は、翼突筋を暖めると、目がはっきり見えるようになる感じがありました。(HPの「自分でできる診断法」のページなどに翼突筋の場所を示した図があります)
翼突筋除痛療法を受けている方で、装置を使っている段階の方は、装置をはめたまま温泉につかるのも効果がある感じです。ただし、装置が合わなかったりすると、逆効果にもなりえます。自分の身体をよく観察しながら入るのがいいのではないかと思います。

第3回目(2009年7月より現在まで)

今、いちばん痛み入力につながるのが、じつは、パソコンです。
やるのとやらないのでは、まったく痛みが違います。

(効果)
パソコン作業をした日で、温泉に入れなかった日は、夜、たいてい痛みで目が覚めますが、温泉にじっくり入ると、目が覚める確率が減ります。痛みの大きさは明らかに違う感じです。
温泉に入れない日は、寝る前に、冷たい飲み物を用意して、それをこまめに飲みながら、何度も家の風呂に浸かります。これでも、かなり違う感じがします。

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