線維筋痛症と化学物質過敏症



 1.線維筋痛症と化学物質過敏症
 2.化学物質過敏症を併発している患者さんへ
 3.線維筋痛症と共通する症状が多い化学物質過敏症
 4.「インフォームド・コンセント」について
 5.患者側から見た「インフォームド・コンセント」
 6.薬剤による副作用について
 6−1.線維筋痛症患者に処方される薬剤について
 6−2.副作用について
 6−3.副作用に関する記事
 7.抗うつ薬、精神薬の副作用について

1.線維筋痛症と化学物質過敏症

「中枢感作」のページで紹介したように、線維筋痛症は、脳の中枢が関わって痛みが起こる疾患グループの中の一つであるとされています。(図1参照)

図をみれば分かるように、このグループの中には、筋筋膜痛症候群、顎関節症、むずむず足症候群、間質性膀胱炎、心的外傷後ストレス障害、抑鬱、原発性月経困難症、偏頭痛、緊張性頭痛、過敏性腸症候群、慢性疲労性症候群とともに、線維筋痛症が入っており、また、同じグループの中に、化学物質過敏症が入っていることが注目されます。
つまり、線維筋痛症を発症した人が、同じグループの他の疾患を発症する可能性があるのと同様に、化学物質過敏症を併発する可能性もあるということを、この図は示しています。

この化学物質過敏症に関しては、日本で2004年に発刊された「リウマチ・膠原病診療実践マニュアル」(後藤眞編集・東京都立大塚病院リウマチ膠原病科)のなかの、「18.線維筋痛症・慢性疲労症候群」の中にも、「症状」とタイトルされたなかに、下のような記述があります。

*合併しやすい、ないし類似の病態・疾患は、過敏性腸症候群、月経困難症、化学物質過敏症(シックハウス症候群)など。

当然ながら、化学物質には、医師から処方される薬剤も含まれます。

線維筋痛症を発症した人には、処方された薬物に対してひどい副作用を示す人が多くいます。痛みが軽くなることと引き替えに副作用が出るなら、合理性がありますが、痛みは軽くならずに副作用だけが出たばあい、患者が味わう苦しみはひどいものがあります。
薬物を服用することによって、失神、嘔吐、畳をかきむしるほどの苦しさを感じたり、ものすごい眩暈、疲労感が出ることもあります。

管理人である私も、線維筋痛症を発症してから目が非常に見えにくくなり、その後、白内障、緑内障をともに発症しました。しかし眼科で処方された白内障、緑内障の点眼薬を目に点しただけで、発熱し、症状が悪化するということが起こりました。もちろん線維筋痛症を発症するまでは、点眼薬で発熱したり、具合が悪くなったことは一度もありませんし、眼科医に聞いたところでは、処方された点眼薬で発熱したり具合が悪くなる患者さんは、ほかにはいないということでした。
このように、化学物質過敏症を併発している場合には、薬を使ったときの副作用が、通常よりはるかに激しい場合があります。

多くの患者は、線維筋痛症を発症する前は、特別に薬物に過敏であったわけではなく、その前は、薬を服用することによって病気がよくなったり、症状が和らいだりという経験をしています。ですからそれと同じように、この疾患を診てもらって投与された薬についても、痛みや疲労感が楽になるだろうという切実な期待を持って服用するわけです。

ふつう、医師から薬をもらえば、患者はそれをきちんと飲むことを義務と思い、真面目に飲まなければ病気がよくならないと考え、言われたとおりに飲もうと努力するでしょう。そして、その結果として痛みは楽にならずに、激しい副作用だけが出たとします。患者のショックは計り知れないものがあるでしょう。
もし患者自身が、自分が化学物質過敏症を併発している可能性を知らなければ、投与された薬剤によって副作用が出たときのショックは大きいでしょうし、また、あまり激しい副作用が出ると、全身状態が悪くなることもあります。

もちろん、化学物質過敏症を併発しない患者さんもいますし、そういう場合は、もし自分に合う薬剤にめぐり合えば、痛みやそのほかの症状がよくなることもあります。化学物質過敏症を併発しているかどうかは、実際に薬物を飲んでみないとはっきりしないことが多いです。

化学物質過敏症を併発した線維筋痛症患者の陥る副作用が激しいことを考えれば、患者の立場から言えば、製薬会社各社は化学物質過敏症を併発した患者でも副作用の出ない、この化学物質過敏症を克服した薬剤の開発研究が重要ではないでしょうか。
図1

2.化学物質過敏症を併発している患者さんへ


薬剤で効果がなくても、別の手もありうる

これまでに分かったこと

中脳の痛み中枢がかかわる、痛みを発生させるメカニズムについては、研究者の間で、多少なりとも研究が進んでいるところだと思います。
具体的にはHPの「線維筋痛症の概念」を見ていただきたいと思いますが、痛みを発生させるメカニズムとして、中脳が関わる下降痛疼痛抑制系の存在が少しずつ明らかになり、そこへの研究がようやくなされはじめているところでしょう。
しかし近年、痛みを発生させるシステムには、抑制系の他に、下降痛疼痛興奮系、つまり抑制する系だけでなく興奮させる系が存在することが、すこしずつ明らかになりつつあります。

(下記は、「線維筋痛症の概念」からの引用)
近年になって、臨床データや実験などから、下降性疼痛を抑制する系だけではなく、興奮するほうの系(興奮性の系)もあることが発見されました。この興奮性の系は、中脳中心灰白質(PAG)や、三叉神経中脳路核(さんさしんけいちゅうのうろかく)(略してMe5)など、中脳の深部にある核にコントロールされており、延髄背側網様体(えんずいはいそくもうようたい)がその機能を行っていると言われています。しかしまだ、詳しい全容は明らかになっていません。

分からないこと

この興奮性の系については、本当に最近になって存在が明らかになってきたようで、2007年に発行された「線維筋痛症ハンドブック」(西岡久寿樹 聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター長:編、日本医事新報社発行)には、抑制系の記述は少しあるものの、最近明らかになってきた下降痛疼痛興奮系の存在について、具体的な記載は見あたりません。
先に書いた下降痛疼痛抑制系についても、まだ分からないことがたくさんありますし、やっと存在が明らかになってきた興奮性の系について、詳しいことが分かるにはさらに時間がかかるでしょう。
また、最近になって興奮性の系が確認されたということは、痛み発生システムには、まだ未知の領域がある可能性があり、今後さらに新たな系、新たな領域が発見される可能性も否定できません。


痛み以外の症状

また、この疾患を発症して重くなってくると、痛みのほかに、疲労感、重量感、強い眩暈、筋力低下、微熱、睡眠障害、口の渇き、あるいは過敏性大腸炎など、さまざまに多彩な症状が出ます。これらの諸症状は、果たして先に紹介した、下降性疼痛抑制系に作用する薬剤(たとえばノイロトロピンなど)だけで解決できるのか、上記の「線維筋痛症ハンドブック」を見ても、それを医学的に担保する研究はまだ出てきていないようです。

大脳指向型(BOOT)咬合療法を編み出した医師は、上記の諸症状のうち、眩暈、微熱、筋力低下、睡眠障害については、後部視床下部の結節乳頭核に所在する「ヒスタミン駆動性ニューロン」という系がその中枢を司っているという仮説を発表しており、この仮説に基づく治療で、実際に効果が上がっているようです。(HPの「痛み以外の症状」を参照ください。)

実際にそうであると仮定した場合、これを司る中枢は、痛み中枢のある中脳ではなく、後部視床下部に所在するということになり、薬剤についても、先に書いた、抑制系への働きかけだけで果たして十分なのか、それについても現状では不明のようです。
それ以外の諸症状についても、脳内のどの部分にそれを司る中枢があるのか、現状では、新たな研究が待たれるということなのかもしれません。

薬剤は、痛み発生システムのどこに効くのか

このように、痛み中枢については多くのことが分かっておらず、今後の研究が待たれるという現状であれば、今、投与されている薬剤が、これらの複雑でさまざまな系や核が関わって発生している痛み発生システムのどこに効くのか、あるいは効かないのか、実際に服用してみないと分からないということなのでしょう。

薬剤治療に関しての、「自分に合った治療法との出会い」「画期的によくなるというよりも、末永く疾患と付き合う」といった考え方は、こうした背景から出てきたものなのかもしれません。
しかし、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」的にうまく効く薬剤と出会えた場合はいいですが、激しい化学物質過敏症が出たり、あるいは投与される薬剤はどれも効果がなかったりした場合、薬剤以外に治療法を知らない患者さんは絶望的な状況に陥りがちです。


薬剤を服用しても悪化を抑えられない場合

福岡市で富石弘輝くんを殺害した薫容疑者も、薬剤投与による治療を受けていたようでしたが、8月に入り、弘輝くんが家にいるようになってから、急激に症状を悪化させたようです。薬剤で悪化を抑えられない場合、あるいは激しい副作用が出た場合に、ほかの治療法を知っておくことは重要でしょう。

この疾患は、脳の痛み中枢が暴走し、全身に激しい痛みが発生しているという病態であると言えますが、中脳の痛み中枢を「ラジオ」と仮定すると、下記のように例えることができると思います。(以下は、HP「治療法の優れた点など」から引用)

たとえば、音量が最大になったままの状態で、壊れてしまったラジオがあるとします。ラジオそのものの修理は、なかなか難しいですが、ラジオに電力を供給している電源を抜けば、大音量で鳴り続けるラジオの音を止めることができます。
「大音量」は、言うまでもなく「激しい痛み」の例えであり、「ラジオ」は、痛み信号を全身に流し続ける「脳の痛み中枢」、「電源」は、原発病巣である「外側翼突筋」と例えられます。

つまり、管理人が受けた大脳指向型(BOOT)咬合療法は、ラジオ(脳の痛み中枢)に電力(痛み信号)を流し続ける電源(外側翼突筋)を修理し、ラジオに電力を供給するのをストップする、それによって大音響の音(痛み)を止める、そういった治療とたとえることができるのではないかと思います。

ラジオ(脳の痛み中枢)そのものの解明や、それじたいを修復する治療はなかなか難しくても、電源を抜けば、大音量で鳴り続ける音そのものは、止まるということになります。

薬剤で効果が出なくても、ほかに効果のある治療法が存在する。

「電源を抜く治療」が難しい場合でも、そのほかの治療もあり得ます。
HPの「治療の組合わせ」に、中枢感作によって発生している痛みでも、全身の筋肉は、凝りや張り、強ばりを起こしていることが多く、中枢への治療と末梢の筋肉への治療とを組み合わせることで、効果効率が上がる可能性があると書きましたが、この、末梢の筋肉への治療のみでも、「痛みが軽くなる」効果が出る可能性があります。

「問い合わせについてQ&A」で書いたように、私は個人的に、針治療や筋肉トリガーポイントへのマッサージ、あるいは注射などで、痛みが軽くなった、あるいはまるで歩けなかったところから、歩けるようになったと断言する患者さんに多く会っています。
数で言えば、薬剤で効果があったという患者さんに比べて、筋肉への治療によって効果があったという患者さんのほうが、ずっと多いですし、治療を受ける前と後の比較でも、筋肉への治療の方が、大きな効果が上がっている例が多いようです。

また、リンク集で紹介した呼吸法でも、かなりの効果が出ている患者さんもいるようです。薬剤投与で効果がなかったり、激しい副作用が出た場合でも、決して絶望ではないです。


待たれる薬剤の副作用の研究

化学物質過敏症を併発した患者さんは、線維筋痛症以外の疾患を発症した場合に、ほかの人と違って、新たな疾患のために投与される薬剤や点滴などで、過敏な反応や副作用が出る可能性があるわけです。他の患者さんには使える薬剤が使えない場合もあり得るでしょう。

製薬会社や研究者の方には、患者の多くに発生する副作用の研究をしていただき、副作用が発生しない薬剤、また、副作用を防ぐ投与方法などを、ぜひ研究していただきたいと思います。


3.線維筋痛症と共通する症状が多い化学物質過敏症

*化学物質過敏症(CSあるいはMCSとも略される)について

化学物質過敏症は、2003年に、内山巌雄・京都大大学院教授(環境保健学)が行った、一般市民対象の調査によれば、日本全体で70万人の患者さんがいるそうです。

線維筋痛症も、潜在的な患者さんを入れれば、200万人の患者さんがいると言われていますが、化学物質過敏症の患者さんも、相当数おられるようです。
線維筋痛症の患者さんからいただくメールをみると、FMと化学物質過敏症を併発している方は相当おられるのですが、実際に、化学物質過敏症の症状は、線維筋痛症患者さんが訴える症状と、とてもよく似ています。


*症状

NPO法人・化学物質過敏症支援センターの資料によれば、まず、おもな症状として、「頭痛、めまい、のどの痛み、息苦しさ、関節痛、疲労感、睡眠障害、うつ、意欲の低下」といった症状があげられています。
これらは、線維筋痛症の症状ととてもよく似ていて、疾患名を線維筋痛症と入れ替えて読んでも、ほとんど違和感はありません。

詳しくは、下記のようになります。

(「化学物質過敏症 相談窓口事業報告書2002-2007年」より)

自律神経症状:
発汗異常、手足の冷え、疲れやすい、めまい

神経・精神症状:
不眠などの睡眠障害、不安感、うつ状態(不定愁訴と言われるもの)
頭痛、記憶力低下、集中力低下、意欲の低下、運動障害、関節痛、四肢末端の知覚障害、筋肉痛

気道症状:
のど・鼻の痛み、乾き感、気道の閉塞感、かぜをひきやすい

消化器症状:
下痢、ときに便秘、悪心

感覚器症状:
目の刺激感、目の疲れ、ピントが合わない、鼻の刺激感、味覚異常、音に敏感になる、鼻血

循環器症状:
心悸コウ進、不整脈、胸部痛、胸壁痛

免疫症状:
皮膚炎、喘息、自己免疫疾患、皮下出血

泌尿生殖器・婦人科系症状:
生理不順、性器不正出血、月経前困難症、頻尿、排尿困難



*これらも、多くの線維筋痛症患者さんがら聞く症状です。
CS患者さんも、非常にたくさんの症状が出るので、医師によれば、患者さんから症状の話を聞くだけで、3,40分は平気で経ってしまうということで、このあたりの症状の多さも、FM患者さんを思わせます。

当HPで紹介しているFMの教科書「Fibromyalgia & Other Ceintral Pain Sundromes」には、臨床的見地から、化学物質過敏症も、この「中枢性過敏症候群」に含まれると判断するのが妥当である、という記述があります。

化学物質過敏症は、「中枢が、化学物質に過敏になる疾患」というふうに考えた場合、また、FMも、中枢で同じcentral sensitization「中枢(性)感作」が起こっていると考えれば、症状が似通っていることについても、なるほどと感じます。

「中枢性過敏症候群」(central sensitivity syndromes)は、「脳中枢が過敏になり、その結果として、さまざまな刺激に対して体が過敏に反応し、多彩な症状が現れる疾患」という捉え方をしてみると、上記のように、多種多彩な症状があらわれる病態が、分りやすくなるように思います。


*語句の日本語訳
central sensitivity syndromesを「中枢性過敏症候群」
central sensitizationを「中枢(性)感作」

(翻訳:デザイン研究所 意匠ノオバ)


*引用および参考

・化学物質過敏症支援センター
 http://www.cssc.jp/

・「化学物質過敏症 相談窓口事業報告書 2002-2007年」

4.「インフォームド・コンセント」について


インフォームドコンセントは、患者を守り、治療の質を高める上でも重要な概念といえると思います。
これについて、ヤフー百科事典には下記のように書かれています。

*インフォームド・コンセント

患者が医師から治療法などを「十分に知らされたうえで同意」すること。
「医師側が患者の権利を無視して自分たちの都合だけで医療を行うことのないように」と、欧米では1960年代に確立した概念。

日本では、1990年(平成2)に日本医師会生命倫理懇談会が「説明と同意についての報告」を出してから、一般的に知られるようになった。
欧米では、インフォームド・コンセントの内容は、病気の説明と各種の治療法、治る確率や治療の問題点、危険性などに及び、効果の確立していない実験的治療や臨床試験薬を使う場合にはとくに不可欠であるとされる。
なにも治療をしない場合や、他の病院での治療法とも比較して、患者に理解できる平易なことばで説明することになっている。


また、インターネット上にある百科事典、ウィキペディアには、上記に加えて、下記のような記載もあります。

インフォームド・コンセント (informed consent)の内容としては、・・・対象となる行為の名称・内容・期待されている結果のみではなく、代替治療、副作用や成功率、費用、予後までも含んだ正確な情報が与えられることが望まれている。

線維筋痛症の治療現場でのインフォームド・コンセントについて書かれた記述を探してみると、日本医事新報社発行、西岡久寿樹教授編集の「線維筋痛症ハンドブック」に、下記のような部分があります。

*北里大学医学部精神科、宮岡等教授:上記「2章基礎編(4)精神医学から見た疼痛」

薬剤が有効である可能性が示唆されると、製薬メーカーが研究に加わり研究資金が潤沢になる。このような経済面との関わりは、時に科学者の科学性をも歪める場合がある。線維筋痛症は社会との接点が多い疾患概念であることを頭に置く必要がある。

精神科の診療場面で対応に苦慮するのは「前の医師に線維筋痛症と診断され、治療したが症状がよくならない。医師から精神的な原因かも知れないといわれて精神科を紹介された」という症例である。精神科医からみると心気症と診断され、極端な場合、線維筋痛症という診断は不適切ではないかと思えることもある。
しかし患者には線維筋痛症が確定診断として告げられ、実施された治療についても「治療法があるからやってみる」という説明のみで、その治療が有効である可能性についてのインフォームド・コンセントはしばしば不適切である。
このような場合、精神科でのその後の治療は困難である。原因のはっきりしない痛み全般にあてはまることであるが、治療に置けるインフォームドコンセントの重要性は十分理解されなければならない。

これは、患者の立場から見ても重要な指摘ではないかと思います。

5.患者側から見た「インフォームド・コンセント」


*管理人から

線維筋痛症は、一般には難治性と言われており、治療を進める上で、患者や、また医療側も、迷うことが多いかもしれません。

NPO法人「ささえあい医療人権センター」(COML)は、インフォームド・コンセントを患者の側から普及することを願って「新・医者にかかる10箇条」を作っています。
COMLの提唱する「新・医師にかかる10箇条」には、関係者にとっても貴重な示唆が多く含まれていると思い、COMLの了解をいただいて、以下に採録しました。


注:NPO法人「ささえあい医療人権センター」(COML)とは

COML=Consumer Organization for Medicine & Law(医療と法の消費者組織)
「コムル」とは、「医療と法の消費者組織」を意味する欧文の「Consumer Organization for Medicine and Law」の頭文字をとった造語です。 医療を消費者の目でとらえようと、1990年9月に活動をスタートした「いのちの主人公」「からだの責任者」である市民中心のグループです。

COMLでは「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者の主体的な医療への参加を呼びかけています。
患者と医療者が、対話と交流のなかから、互いに気づき合い、歩み寄ることのできる関係づくりを願っています。
COMLは、患者中心の開かれた医療の実現を目指します。

「ささえあい医療人権センター」(COML)のHP
http://www.coml.gr.jp/

*COMLでは電話相談も行っているそうです。

(HPより)
COMLでは、医療者ではない相談スタッフがご相談をお聞きしています。そのため、診断をしたり、答えを出したり、方向づけはできませんが、相談者の気持ちに寄り添いながら、じっくりお話を伺っています。そして、相談者ご自身が答えを見つけるための問題整理のお手伝いをし、主体的に問題解決していただける支援やアドバイス、情報提供を心がけています。

COMLが提唱する『新・医者にかかる10箇条』

私たち患者が、自分の望む医療を選択して治療を受けるには、まずは「いのちの主人公」「身体の責任者」としての自覚が大切です。そのために、どのような心構えで医療を受ければいいのかについて、10箇条にまとめました。

この10箇条は、COMLが厚生労働省の研究班の一員として素案づくりを手がけ、インフォームド・コンセントに患者が主体的にかかわっていくことを願って、1998年に厚生省「患者から医師への質問内容・方法に関する研究」研究班から発表されました。

あなたが命の主人公・からだの責任者

1.伝えたいことはメモして準備
2.対話の始まりは挨拶から
3.よりよい関係つくりはあなたにも責任が
4.自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報
5.これからの見通しを聞きましょう
6.その後の変化も伝える努力を
7.大事なことはメモを取って確認
8.納得できないときは何度でも質問を
9.医療にも不確実なことや限界がある
10.治療方法を決めるのはあなたです
(治療の効果や危険性もよく相談しましょう)

(実践編)
COMLの提唱による
「検査・治療・くすり・入院など具体的な質問内容33項目」

・検査
なぜ検査の必要があるのですか。
どこを調べる検査ですか
検査はどのようなスケジュールでおこなわれるのですか
検査でどのようなことが分かりますか
どのような方法で行われますか
その検査はどのような苦痛を伴いますか
どのような危険がありますか
この検査にかかる時間はどのくらいですか
検査でわかった私の病気はどんな具合ですか

治療
治療期間中はどのようなスケジュールですか
どのような治療ですか
治療中に何か制約されることはありますか
どのような変化が期待できますか
どのような危険がありますか
その治療を受けないとどうなりますか
治療後、日常生活に変化が起きる可能性はありますか
治療後の回復にはどのくらいかかりますか
ほかにどんな治療法がありますか

くすり
何という名前のくすりですか
何に効くくすりですか
このくすりを飲んでいて気をつける症状(副作用)は何ですか
変わった症状が出たときはどうすればいいですか
ほかのくすりや食べ物といっしょに飲んでも大丈夫ですか
いつまで飲む予定ですか
このくすりより安くて良いものはありませんか
安い薬と比べてどのように効果が異なるのですか

入院
入院が必要な理由と目的を教えてください
入院中におこなわれるのは、どのような検査や治療ですか
入院中に外出や外泊はどのくらいできますか
予想される入院期間はどのくらですか
退院後の生活はどのようになるんですか
かかりつけ医を紹介してください

その他
私の病気の原因は何ですか
今回の病気はもともと持っている病気と関係ありますか
日常生活で気をつけることは何でしょう
(それぞれの場面で)どのくらい費用がかかりますか

(COMLは、上記の質問を受診のとき心構えとして利用することを提唱しています。)

6.薬剤による副作用について

6−1.線維筋痛症患者に処方される薬剤について

6−2.副作用について

6−3.副作用に関する記事

 記事1.2009年3月7日付 産経新聞
 「抗鬱薬服用で攻撃的反応 厚労省が副作用調査へ」

 記事2.2009年3月5日付 リスファクス掲載記事
 (発行:株式会社医薬経済社)
 「SSRI 相次ぐ「攻撃性」症例、添付文書には「警告」なし」

 記事3.2009年3月6日付 リスファクス掲載記事
 「厚生労働省 添付文書の改訂含め対策検討へ」

 記事4.2009年3月17日付 讀賣新聞
 「薬の副作用を疑似体験」

6−1.線維筋痛症患者に処方される薬剤について

専門書によれば、線維筋痛症患者に対しては、現在のところ、およそ以下のような薬剤が多く投与されているようです。

*抗うつ剤
 ・三環系抗うつ剤
 ・選択的セロトニン再取り込み薬
 (Selective Serotonin Reuptake Inhibitors=SSRI)
  薬剤名・・デプロメール、ルボックス、パキシル、ジェイゾロフトなど
 ・セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
 (Serotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitors =SNRI)
  薬剤名・・トレドミン、エフェクサーなど

*鎮痛剤
 ・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  薬剤名・・アスピリン、バファリン、エスタックイブ、ロキソニン、ボルタレンなど
 ・ワクシアニウィルスで特殊処理をしたイエウサギの皮膚組織抽出物
  薬剤名・・ノイロトロピン

*抗痙攣薬
  薬剤名・・ガバベンチンなど

*ホルモン薬
 ・副腎皮質ステロイド薬
  薬剤名・・プレドニン、デカドロンなど

薬剤については、仕事をリタイアせざるを得ないくらい悪化した患者さんより、痛みをこらえつつも何とか仕事がやれるなど、比較的軽症の患者さんに、効果があることが多いようです。

薬剤投与で、痛みその他の症状が少しでも楽になることが望まれますが、残念ながら、そういった望ましい効果が出ずに、逆に、症状が重くなるような変化が出た場合、それがFMそのものが悪化しているのか、あるいは薬剤の副作用が出ているのか、判断がつかないような場合もあると思います。
そういったときに、一般患者向けの副作用情報へのアクセス方法を知っていれば、自分の症状をみて、医師に相談する助けになる可能性があると思います。
また、医師の説明に不足感を感じたときなど、自分で調べる必要性を感じる場合があるかもしれません。
そういった場合、あるいは、一般的な薬剤の副作用に関する情報に接したいと思ったときに、誰でもアクセスできる、公的な相談窓口があります。

http://www.info.pmda.go.jp/
(医療品医療機器総合機構)

このホームページには、一般の方向けのページもあります。
また「おくすり相談・医療機器相談窓口のご案内 」のページもあります。
下記が「おくすり相談・医療機器相談窓口のご案内」のページです。

http://www.info.pmda.go.jp/kusuri/kusurijyoho.html

また、医療関係者に向けた「重篤副作用疾患別対応マニュアル」や、その中を開くと「薬剤惹起性うつ病」などのページもあり、私自身は、関連情報を知りたい場合にはそちらを見ることもあります。
 
6−2.副作用について

(以下は「線維筋痛症ハンドブック」(日本医事新報社出版)
「第4章の3 精神科医から見た薬物療法」より引用)

線維筋痛症と大うつ病の鑑別点
薬:副作用
線維筋痛症・・少量で出現しやすい ←→ 大うつ病・・任容性あり

*このように、線維筋痛症患者は、化学物質過敏症を併発しやすかったり、あるいは、鬱病に比べて「少量の薬剤で副作用が出やすい」という傾向があるようです。
参考までに、管理人である私は、どの薬剤も残念ながら効果がなく、逆に悪化した後は、点眼薬で発熱するほど薬物に対して過敏になってしまい、当時服用した薬では、筋力の低下、吐き気、だるさ、猛烈な眩暈、自殺企図など、副作用を疑われる症状が出ました。
今後、FM患者へ投与される薬剤の副作用の研究が、少しでも進むことが望まれると思います。

*管理人の場合

私は一時、SSRIを処方されていましたが、いくつかのSSRIを飲んだ後、やはりSSRIの一つであるパキシルを数カ月服用したあとに、緑内障を発症しました。
緑内障も、FMの症状の一つかどうか、そのときは判断がつかなかったのですが、その後、5.1で紹介したHPの副作用情報をみたところ、SSRIによって考えられる副作用の一つとして、緑内障の例が紹介されていました。

(参考)
http://www.info.pmda.go.jp/
(医療品医療機器総合機構)

私と同年代の女性の患者さんで、同じように緑内障を発症しておられる方を知っていますが、この患者さんは、一時は、かなり長期にわたって、SSRIを服用していたそうで、気がついた時には、右目の視野が、かなり欠けていたそうです。
多くのFM患者さんは、緑内障を発症しやすい年齢にあるともいえます。しかし、SSRIの副作用の一つとして「緑内障」の例が紹介されていることもあり、もし、不安を感じる方がおられれば、一度、眼科で視野検査をされることをお勧めします。

視野検査をすれば、緑内障を発症しているかどうか、すぐに分ります。
一度視野が欠けると、欠けた部分は元に戻らないので、心配な方がおられれば、早めに検査を受けたほうがいいかもしれません。

緑内障と分った場合には、治療法はあります。私は早めに発症が分ったので、その時点で、治療を開始し、それ以上の悪化は食い止められました。
私は一時、緑内障の点眼薬にも体が過敏に反応していたのですが、薬を変えてもらうなどして、なんとか治療を続けました。
眼科では、定期的に眼圧検査をしますが、この数値を管理することによって、緑内障の進行を食い止められるようです。
私は緑内障を発症してから5年ほど経ちますが、早めに発症がわかったために、左目の発症はなく、右目は、視野が若干欠けたのみで済みました。

また、緑内障は、薬の飲み合わせによっては、発症する危険が大きくなるという話もあるようです。目は大事なので、その辺は、上記の機構とか薬局で尋ねるなど、それぞれ、調べられたほうがいいかもしれません。
6−3.副作用に関する記事

以下に、2009年に報道された、薬剤の副作用に関する記事のいくつかを載せます。

*記事1
2009年3月7日付 産経新聞

抗鬱薬服用で攻撃的反応 厚労省が副作用調査へ

鬱病(うつびょう)治療のため、「パキシル」といった抗鬱薬を服用した患者の中に、服用後に暴力をふるうなど人を傷つける恐れのある他害行為の症状が表れたという報告が平成16〜20年にかけて計42件、厚生労働省に寄せられていたことが6日、分かった。殺人事件を起こしたケースもあり、投与にかかわった医師らからは薬の副作用の可能性を指摘する声が出ている。厚労省は近く、専門家から意見を求めるなど因果関係の調査に乗り出す。
 厚労省によると、他害行為の報告が把握されている抗鬱薬は「パキシル」のほか、「ジェイゾロフト」「デプロメール」「ルボックス」の4種。
 主な報告は「バイクをけったり、車を殴る」「男子高校生が『このままでは人を殺してしまう。刑務所に入れてくれ』と要望した」など。鬱病を併発した認知症の70代の男が、パキシル投与後に妻を殺害したり、45歳の男が妻の頭を金属類で殴り重傷を負わせたりするなど、刑事事件に発展したケースもあった。

42件のうち、もっとも広く流通している「パキシル」に関する報告は28件あり、製造販売元のグラクソ・スミスクラインによると、処方した医師は5件で薬剤との因果関係を「確実」とし、18件で「疑われる・否定できない・関連あり」と判断した。
 そのため、厚労省では専門家から意見を求めるとともに、他の抗鬱薬でも同様の報告が寄せられていないか、薬の安全情報をとりまとめる医薬品医療機器総合機構を通じて把握を急いでいる。因果関係が強く疑われれば、添付文書の注意書きや副作用に「攻撃的反応」などと明記する。
 ただ、鬱病以外の患者への誤投与や、別の薬との飲み合わせにより他害行動が誘引されたケースも考えられ、精査が必要となる。

 厚労省医薬食品局安全対策課は「他害行為が薬の影響によるものか、慎重に調べている。ただ副作用を過剰に恐れて急に薬の服用をやめると、使用者の命にかかわる副作用が発生する場合もある。個人で判断せず、担当医と相談してほしい」としている。

(管理人注:上記の記事中の、「副作用を過剰に恐れて急に薬の服用をやめると、使用者の命にかかわる副作用が発生する場合もある」という記述は、多くの専門家が指摘しています。注意が必要でしょう)

抗鬱薬

 国内では30種類以上が承認されている。鬱病患者数の統計はないが、躁(そう)と鬱の状態を繰り返す躁鬱病を含む気分障害患者は約92万人前後といわれる。鬱病患者のほとんどが薬の処方を受けている。鬱病を自覚していない潜在患者も多いとみられる。躁鬱病の患者が、医療現場で「鬱病のみ」と診断され、投与された抗鬱薬を躁状態の時に服用し、異常な興奮状態に陥るケースも報告されている。


*記事2
平成21年3月5日付 リスファクス掲載記事
(発行:株式会社医薬経済社)

「人を殺したくなった」副作用報告
SSRI 相次ぐ「攻撃性」症例、添付文書には「警告」なし

2000年の発売以来、100万人以上が服用したとされるグラクソ・スミスクライン(GSK)の「パキシル」など、選択的セロトニン再取り込み薬(SSRI)の抗うつ剤で、他人を傷つける「攻撃性」や「人を殺したい」といった「殺人念慮」の副作用報告が相次いでいる。
本誌が、医薬品医療機器総合機構への情報公開で入手した医薬品副作用・感染症症例報告書によると、国内で販売されている4製品のSSRIで、他人を傷つける恐れのある副作用症例が、04年4月から08年11月の4年半の間に、合計40件報告されていることが分かった。そのうち殺人事件に至った例や、暴力行為で警察沙汰となった症例が少なくとも6件あった。

SSRIについては、以前から専門家の間でも「攻撃性」などを懸念する副作用が指摘されていたが、添付文書には示唆する文言はほとんどない。メーカー各社は「今のところ添付文書に記載することは考えていない」としているが、厚生労働省はこれらの事例とSSRIとの因果関係について、調査を開始した。

開示請求は、「パキシル」と「ジェイゾロフト」(ファイザー)、「デプロメール」(明治製菓)、「ルボックス」(ソルベイ製薬・アステラス製薬)の4製品について、メーカーが医薬品総合機構に提出した副作用報告書を対象にした。
他害行為に結びつく可能性がある「攻撃性」「激越」「怒り」「殺人念慮」「反社会的行動」「アクティべーション症候群」に該当する副作用症例を求めた。その結果、「パキシル」で28件、ジェイゾロフトで2件、同一成分(フルボキサミンマレイン酸塩)であるルボックスとデプロメールで、合わせて10件の報告があった。

このなかで、暴行や殺害に加え、攻撃性や怒りの高まり、「人を殺したくなった」といった殺意の発現など、他害行為に結びつく危険性があった症例は15件あった。8件をパキシルの症例が占めている。

殺害の症例もパキシルだった。前頭側頭型認知症の70歳代の男性がパキシル服用後、中枢刺激症状である「アクティべーション症候群」を発症し、2週間後に妻を殺害。医師は、副作用と薬剤の因果関係を「否定できない」と記載している。
40件のうち、医師が副作用と薬剤との因果関係を「確実」(明らか)とした症例は9件にのぼる。また、「可能性大」が5件で、「疑われる」10件、「多分あり」1件、「否定できない」5件、「可能性小」1件を合わせた31件は、因果関係を疑っている。
(中略)

「うつの家族の会・みなと」主宰の砂田くにえさんの話

「SSRIのを服用して他人を傷つけてしまう副作用があるのだとしたら、きちんと添付文書に記載したり、自分たちに知らせたりして欲しい。知っていれば、注意もできるし、危ないと感じたら医師に相談して薬を変えることだってできる。知らないことの方が怖い」

SSRI副作用 メーカー、行政とも情報システム機能せず

医薬品にとって「情報」は命だ。特に、副作用情報を分析評価するシステムが機能しないとき、危険に晒されるのは患者となる。本誌の情報公開請求に基づいて開示された抗うつ剤SSRI(選択的セロトニン最取り込み阻害剤)の副作用症例報告を読み解くと、メーカーと厚生労働省の双方の安全管理システムが整備されていない現状が浮き彫りになる。

SSRI市場で、GSKのパキシルは50%近いシェアを持つ。医薬品医療機器総合機構に報告された「攻撃性」など、他害行為を引き起こす可能性がある副作用の症例報告40件のうち、パキシルは28件を占める。このなかで、症例を報告した現場の医師が、薬剤との因果関係を「確実」と判断した症例は8件だった。「疑われる」が10件で、「否定できない」5件を含めると23件にのぼる。
つまり、8割以上の症例で医師がパキシルとの因果関係を疑っていたことになる。しかし、その23件のうち、GSKが因果関係を認めているのはわずか3件。残りは、情報不足や併用薬、原疾患の様態を理由に「確実ではない」「判断が困難」とし、因果関係を認めていない。

たとえば、他害行為を招いた代表的な症状として「アクティべーション症候群」(敵意や焦燥などをもたらす中枢刺激症状=以下AS)がある。GSKは、このASについて10件の症例報告をしているが、すべてについて因果関係を認めていない。GSK開発本部安全性管理部の寺島保典部長は「医師の協力が得られない事例が多く、因果関係がはっきりしないため」と説明する。
毎年、医薬品ごとに行政に提出する「安全性定期報告書」では、GSKはASの症例数こそ報告しているものの、「未知の副作用」の項目では一言も触れていない。

これらの副作用に中止すべき「予兆」がなかったわけではない。2004年、カナダのパキシルの添付文書に、「他害行為」に対する注意が記載された。情報は東京のGSK本社にも寄せられているが、安全性管理の責任者である寺島部長は情報を「知らなかった」という。
一方、副作用報告を集積する医薬品医療機器総合機構も、製薬企業の報告を生かしきれていなかった。2006年度に5件だった他害行為に関する副作用報告は、2007年には26件に増加していた。だが、機構は、個々の薬剤の副作用の件数は把握していても、「SSRI」という括りで、同様の傾向の副作用が起こっていることまでは、「分析できていなかった」と告白する。

厚生労働省は

厚生労働省医薬食品局の森和彦安全対策課長は、こうした問題について「これまで不十分だったと指摘されれば、その通りかもしれない。早速、メーカーや専門家の意見を聞くなどして対策を検討したい」と語り、2009年度から医薬品医療機器総合機構の安全部の人員を100人に増やし、精神科領域の担当者も配置するとしている。


記事3 
平成21年3月6日付 リスファクス 掲載記事

厚生労働省 添付文書の改訂含め対策検討へ
SSRI副作用問題 抗うつ剤「全般」で関連を調査

抗うつ剤SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)で、他人を傷つける恐れのある副作用報告が相次いでいる問題として(5日付既報)、厚生労働省は添付文書の改訂を含めた対策の検討を開始した。すでにメーカー各社からにヒアリングを始めており、専門家との話し合いを進めている。近く医薬品医療機器総合機構で、専門家による検討会(非公開)を開き、対策案をまとめる方針だ。その後、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会で、添付文書の改訂などを含めた対応策を検討する。

厚生労働省医薬食品局安全対策課の森和彦課長は、5日、本誌取材に、すでにグラクソ・スミスクラインなどSSRIを販売するメーカー4社を集め、意見を聞いたことを明らかにした。他人を傷つける恐れのある副作用について、医師にどのような情報提供を行っているかの報告を受けた。
さらにメーカーとして、どのような情報提供が可能か意見を求めたという。森課長は「メーカーとしても、何らかの対応が必要と考えているようだ」と述べ、厚生労働省も「対応が必要」との認識を示した。

また、各メーカーに対して、SSRIと他害行為に関わる副作用の因果関係について、きちんとしたエビデンスを提出するよう促した。それらのデータを、専門家を交えて検討し、「メーカーや製品ごとに限局的に捉えず、抗うつ剤全体として考えたい」としている。添付文書の改訂や対策の根拠となる海外の情報も含め、調査するよう求めたという。

一方、現在の添付文書では、十分な注意喚起がなされていないという指摘に対しては、「インパクトが足りないというのであれば、聞く耳を持っている」と語り、添付文書の改訂に前向きな姿勢を示した。「抗うつ剤について、専門医以外でも使われている一方で、この不況により、うつ病患者が増加する可能性がある」との時代背景を前提に、速やかに対応する方針を示した。
医薬品医療機器総合機構に対しては、SSRIだけでなく抗うつ剤全般で他害行為を招く怖れのある副作用との関連を調査するよう指示した。機構は「SNRI」(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)や「三環系」といった抗うつ剤についても、同様の副作用と関連がないか、データベースを用いて分析することになる。



記事4 
平成21年3月17日付 讀賣新聞

*下記は、薬の副作用を記者が実体験して綴ったレポートです。

(シリーズこころ 統合失調症の治療)
薬の副作用を疑似体験

 統合失調症の治療に薬は欠かせないが、患者にとっては頭がぼーっとするなど副作用の悩みは大きい。薬を出す側の医療者にもそんなつらさを実感してもらおうと、疑似体験ができる装置を製薬会社が作ったと聞き、記者も試してみた。

 机の上に置かれたのは、パソコンとつながれたゴーグルのような装置。目をすっぽり覆うように装着すると、これから始まる体験内容を説明する映像が内側に現れ、イヤホンから解説が聞こえてきた。
 「映像にゆがみをかけて、視覚的に仮想の鎮静状態を作り……」。薬が効き過ぎて目の動きが鈍った際の見え方だという。よく分からないが、とにかくやってみよう。
 画面が、ゴーグルの外側にある小型カメラの映像に切り替わった。机の左手に電話機がある。イヤホンから指示が聞こえてきた。「受話器を上げてください」「2を押して受話器を戻してください」

 言われた通り手を伸ばそうとしたが、距離感が全くつかめない。映像がぼやけ、頭をちょっと動かしただけでも電話機の輪郭が激しくぶれる。酒に酔った時のように、頭がクラクラする。

机の上に手をはわせて、やっと受話器にふれた。指でプッシュボタン一つ一つに触れながら、なんとか2にたどり着いた。これでは10けたもある電話番号を押すなど到底無理だ。以前取材した患者が「電話をかけられない」と言っていたのを思い出した。
 このほか図形を描くなど、体験は5分間。100点満点で記者の得点は62点。普通の状態ならだれでも満点が取れる作業だが、20〜30点台の人も少なくないという。こんな状態では、社会復帰しても仕事をこなすのは難しいだろう。街を歩くだけでも怖いに違いない。

 装置は50台製作。昨年11月以降、病院などで、医師、看護師ら1万5000人が体験した。「何気ない作業がこれほど困難だとは」「副作用を理解したつもりになっていた」などの感想が寄せられているという。
 ひどい眠気やだるさなど、過剰な薬の影響はほかにも多い。こうした疑似体験が、不適切な大量投与の防止や、より慎重な診断につながることを期待したい。

 装置の開発にかかわった福島県立医大教授の丹羽真一さんは「医師は、症状を抑えるためなら少しぐらいの副作用は仕方がないと考えがちで、もっと真剣に患者の声に耳を傾けるべきだ」と話している。

(管理人注:この讀賣新聞記事に出てくる症状は、やはりSSRI等を飲んだ私にも、「これだ!」と膝を叩きたくなるようなものが多かったので、あるいは、多くの方にも共通する症状かもしれません。
繰り返しになりますが、患者さんは、薬物によって、痛みなどの症状が少しでも緩和されることを望んでいるわけで、許容できる副作用のなかで、そういった効果が出ることがもっとも望ましいわけです。
しかし、薬物を服用した後、症状が改善せずに、悪化するなどの変化があったとき、服用した薬剤などの副作用情報を集積している公的機関を知っていることで、便利な場合もあるでしょう。)
7.抗うつ薬、精神薬の副作用について

FM患者がよく処方される、抗うつ薬や精神薬による薬害の実例について、HP読者でもあるFM患者の方から寄せられた映像情報です。

これまでに、HP宛てにいろいろな相談メールを受けてきましたが、それを見ると線維筋痛症の患者さんは、私を含め、処方される抗うつ薬や精神薬に、依存(中毒)という危険な副作用があることについて、ほとんど説明を受けていないことが分ってきました。
このHPでも副作用についての情報は載せてきましたが、この資料を見ると、ここに載せた副作用の情報が行きわたっておらず、まだ不十分と思われるので、読者からいただいた資料を、下記に採録します。

薬は病気の回復を期待して服用するもので、回復がないのに継続して飲むと、害反応だけが蓄積します。そして、回復したかどうかは、患者にしか分りません。

下記の3つの資料映像を見ると、効果がないのに抗うつ薬や精神薬を服用するのは、患者にとって危険なことが分ります。薬の副作用の確認は、必ず患者さん自身で行ってください。

調べたところによると、医学部の授業では副作用の講義は少なく、精神医薬被害の分野では第一人者である、精神医薬被害連絡会の中川聡さんは、映像資料の3のなかで、医師や薬剤師の副作用に関する知識は非常に貧弱だと指摘しています。
特に、多剤を同時に飲むことについては、危険性は非常に高いにも関わらず、ほとんど患者さんに説明がなされていないようです。
FM患者は多剤を同時に処方されることが多いので、安全性の確認は、患者さん自身で必ず行ってください。
確認の方法については、上記の記事、および下記の映像資料の中に言及があります。


映像資料1.
「日本で起こっている精神薬の薬害について」医師 内海先生 - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=eonomVJho64

講演している内海医師は、薬害の多発は、製薬会社の売上至上主義に原因があり、非常に問題だと言っています。精神薬の依存性の高さは麻薬と同等かそれ以上であり、常用することで脳の萎縮が起こることに警告を発しています。
講演で言及されている副作用の第一段階「だるくてめまいが酷く、寝たきりになる」は、かつて抗うつ薬を服用していたころの私とそっくりですし、また、「薬への依存になりやすいことの危険性」と、「薬を止めると症状悪化などの禁断症状が出る」については、これまで来た相談メールのいくつかと一致します。
このあたりは、医薬ビジランスセンター(電話06−6771−6345)発行の「薬のチェックは命のチェック」49,51号も参考にしてください。


映像資料2.
「精神薬が与える歯科、口腔外科領域への悪影響」
歯科医 小峰先生 - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=o-f-CXGcNC8

FM患者さんは必ずご覧になるように勧めます。
小峰歯科医が、精神薬、降圧剤によって、だ液が大きく減って顕著に歯周病や虫歯を引き起こすと指摘しています。FM患者の場合、歯科治療でかみ合わせが変わることが症状悪化に結びつき、歯を失うことは非常なダメージになります。



映像資料3.
2012第二回精神薬の薬害を考えるシンポジウム - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=wTEdGHah4OE

3時間を越える長い内容ですが、SSRIやパキシルなど、FM患者が多く処方される薬によって引き起こされる深刻な副作用について、重要な内容がたくさん含まれています。
特に怖いのが、上記のように、医師、薬剤師といった専門家が、薬が引き起こすマイナスの薬理作用について非常に乏しい知識しかないと言われていることです。
浜六郎医師による「向精神剤による耐性依存、犯罪行為および禁断症状」と、パキシルが原因の強盗、傷害、殺人などの事件の説明は、これらを服用している患者が是非とも知るべき内容です。
事件の中には、線維筋痛症患者がパキシルを処方され、7歳の我が子を絞殺したものも含まれています。副作用が明記されている医薬品添付文書から見て、この処方には明らかに問題がありましたが、裁判ではそれが争点になることはありませんでした。
アメリカでは、このような裁判では製薬会社に巨額の賠償を命じる判決が相次いでいるのですが、日本では事情が違い、薬害の救済はとても難しく、服用する患者が知識を身に付けて自衛するしかありません。
また、こういう被害が続出する原因として、講演では国が行う治験のおかしさも言及されています。
司会の報道ジャーナリストから、「医師は製薬会社が持っている資料を疑わないのか」という質問がなされましたが、内海医師は「ほとんどの医師は疑わない。しかしデータをよく検討するとウソで塗り固められているか、データが改ざんされていることがほとんど」と答えています。
それについて、「なぜそういうことになるのか」という質問に対しては、浜医師が「医学部の教授、指導的立場の医師が金まみれになっている」と答えています。
「たとえば製薬メーカーの研究者の研究費は一人数千万円であり、一人300万円の大学研究者よりはるかに多く、大学の研究もメーカーの研究に依存している」。
そういうことから
「あらゆる種類のガイドラインが、薬を使わせる方向に向かっている」と言っています。
これらは治療を選ぶ上で、患者がよく考えなければいけない事態です。

2009年に厚労省は、抗うつ剤には攻撃性があることを公式に認めましたが、患者や家族に詳細な説明がなされることはほとんどないようです。
FMなどのCSS患者は、薬に過敏なことが多く、全く飲めない人も多いですが、現状の治療は薬の処方が多く、薬を服用する場合はさまざまなことを自分で調べることが必要になります。
また、次のHPも参考になります。

精神医療被害連絡会ホームページ「その薬、本当に安全ですか?」
http://seishiniryohigai.web.fc2.com/seishiniryo/

*このHPを運営している中川聡さんの薬理作用の知識は、医師や薬剤師の知識を凌駕するものがあり、参考になります。医師の方もぜひお読みください。

「医療関係の皆様へ」
http://seishiniryohigai.web.fc2.com/seishiniryo/message/iryou.html

「医療過誤の薬害」
http://seishiniryohigai.web.fc2.com/seishiniryo/higai/yakugai.html

ホームページに来る相談の内容でも、依存(中毒)と思われる状態になり、薬が増えてしまった、また、増えた薬を止めると状態が悪くなる(上記映像資料をみると、禁断症状が疑われる)、薬を飲んでも良くならないことで副作用の自殺企図が高まるためか、薬を多量に飲んで自殺を図ってしまったという訴えがかなりあります。

薬の投与でこういう事を引き起こさない様に、よくよく気を付けることが大事だと思います。

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