医療側スタッフの声



 1.大脳指向型(BOOT)咬合療法を行っている医院について
 2.医療側スタッフの声
 3.この治療で良くならない場合

1.大脳指向型(BOOT)咬合療法を行っている医院について

線維筋痛症をはじめとするさまざまな痛みに効果が出ているこの治療法ですが、治療を行っている医院の診療科名は「歯科医院」になっています。これは、厚生労働省の指導により、医師のライセンスの関係でこの表記でなければならないといった事情があるようです。

しかし現在は、医院の限られた人的資源や時間を、なるべく線維筋痛症など、重度の痛みに苦しむ患者さんの治療に当てるために、ふつうの歯科治療はなるべく減らしているようです。
したがって、表記は「歯科医院」ですが、現在は、中枢感作によって引き起こされる、線維筋痛症などのさまざまな疾患の治療を重点的に行っています。
上記の事情のために、虫歯治療に関しては、線維筋痛症の患者さんでも、症状の軽い人は「ほかの歯科医院でやってください」ということもけっこうあるようです。


一患者からみて、この医院で行っている(線維筋痛症などの)中枢性の疼痛治療は、歯科医師が歯科治療の延長として行っているものではなく、最初に医師が顎関節症の研究から入り、中枢性疼痛に的を絞った研究をし、臨床を繰り返した結果、編み出したものといえると思います。
実際上は、筋筋膜痛症候群、線維筋痛症などの治療を主に行っていますし、私のような重症者も受け入れてくれます。ただし、残念ながら入院施設がありません。


2.医療側スタッフの声(患者さんへ)

「線維筋痛症」は、ふつうの風邪や腹痛とは違う疾患

線維筋痛症は世界的に見た場合、いまだにメカニズムも治療法も、評価が確立されたものがない疾患と言えると思います。
ふつう、世の中のたいていの人は、病気は病院に行って医師に診せれば治るものという認識を持っていると思います。もし万が一、自分の身体に何らかの異常や不調があったとしても、どこかの病院に行って、医師に診てもらえばなんとかなる、多くの人は、何となくそう思い、安心して毎日を送っているのではないでしょうか。


しかし線維筋痛症は、さきに書いたように、ふつうの風邪や腹痛とは違って、今も確定的な治療法が定まっていない疾患です。
つまり、どこの医院にいっても当たり前に治療してもらえるほかの疾患とはまるで違います。そのなかで、私の受けた治療法は非常に効果がありましたし、私のほかにも、この治療法で回復した人が多くいます。それでもやはり、私の印象では、患者が治療を受ける場合にも、ふつうの風邪とか腹痛とは違った覚悟や意思といったものが必要になる気がします。

治療効果を上げている医療機関は、まるで「野戦病院」?

線維筋痛症の患者は、たいていの場合、相当長い間にわたってひどい痛みに耐えています。その痛みを止める効果のある薬とか治療法に、残念ながらこれまで出会えなかった患者も多くいて、そういった患者さんは、「ふつうは病院にいけばよくなるのに」というた認識を「裏切られた」ような気持ちを持っていたり、「なぜ医師なのに病気を治せないのだろう」という素朴な疑問を抱いていたりします。
そういう患者さんは、「線維筋痛症を治療してくれる」という医療機関に行くと、「今度こそは」という切実な希望を持って、医師側にそれまでの苦しさとか、なぜ自分の痛みを誰も止めてくれないのかという悩みについて、綿々と訴えたりすることもあると思います。
しかし、この疾患はふつうの風邪とか腹痛と違い、いまだに全世界的にみて治療法が確定していない疾患であって、辛い認識ではありますけれども、やはり患者側に、ふつうの風邪や腹痛にかかったときとは違った、病気との向き合い方が必要になるのではないでしょうか。


私の治療をした医院でも、医療スタッフは全力を尽くして治療に当たってくれます。それにしても、この治療を行う医師もスタッフの数もきわめて限られていて、それぞれが一人ずつの気力、体力しか備えていないわけです。
私の印象では、線維筋痛症患者が多く集まる医療機関は、一種の「野戦病院」のような感じではないかと思います。この疾患を発症して、いろいろな病院や医院に行ってもはかばかしい治療効果が得られなかった患者さんたちは、この非常に辛い疾患と闘っているという意味で、文字通り「戦場」にいるような感じがあります。
また、ふつうには治らない患者さんを迎え入れて、通常とまるで違った激痛とか、ひどい頭痛やめまいなど、ものすごく辛い日々を過ごしている患者さんのケアをするのは、一般の患者さんを迎え入れる医療機関とは、また違う苦労があるように思います。
そのなかで、患者側も、ふつうの風邪を引いたときとは違う、病気との向き合い方が必要になるのではないかと思います。


治療による「波」

具体的には、私の受けた治療法にも、やはりよくなったり悪くなったりという波はありました。そのときに、悪くなるたびにその症状に振り回されて、医師側にクレームを付けたり、ちょっとしたすべてのことについてのケアを医療側に求めたりしていれば、医療側がやがてパンクしてしまうのではないかと思います。
線維筋痛症は、発症のメカニズムについても、まだ世界的にみて、定説が定まっていない疾患ですが、そのなかで、私を治療した医師は、この疾患を発症するメカニズムや、また自らが行っている治療法についてもさらに研究を重ね、これまで解明した点をもとに、さらに優れた治療がないか等の研究を続けています。
もし患者が、そういった意欲のある医療者を酷使し、万が一にも潰すようなことが続いたとしたら、最終的に救われないのは、患者側でしょう。私は参考として、この治療を行っている医療スタッフの話を聞いてみました。

スタッフの話

「やはり、治療の仕事をしていていちばん嬉しいのは、本当にひどい状態だった患者さんがよくなったのを見るときですね。医院に初めて来たときには、歩くこともできず、ほとんど顔さえ上げられなかった患者さんが、治療が進んできて、普通に歩けるようになり、普通の人のようにいろいろなことができるようになって喜んでいるのをみるとき、ほかでは得られない感動があります。パソコンが出来るようになったよとか、また治療が一段階進んで、買い物をしたよとか美術館に行ったよとか、そういう話を実際に聞くと、本当によかったなあと、そういうときが一番嬉しいですね」

「長い治療の間には、やはり調子の波があります。そのたびに不安になったりとか、疑問や不安をぶつける気持ちは分かりますが、この疾患の治療には、ちょっとしたことには振り回されない強い意志が必要のような気がします。そのほうが最後には患者さんも助かるのではないでしょうか」

「長い治療を受け続けるには、それなりの意志の強さも必要だと思います。投げ出さず、治すという強い意思を持ち続けることも必要ではないでしょうか」

「治療側も神様ではないので、患者の何もかもを受け止められるわけではなく、どんなにがんばっても何人分もの気力、体力があるわけではないです。治療には、患者さん自らが、自分を励ます努力も必要になると思います」

私も以上の話を聞いて、患者が自分をコントロールし続ける心の持ち方も大事ではないだろうかと思いました。


3.この治療で良くならない場合

以下は、大脳指向型(BOOT)咬合療法で治療した一患者としての、私の実感です。

この治療法では、これまでに多くの患者さんが回復していますが、なかには快癒までいかない患者さんもおられます。

また、管理人である私自身も、回復の過程のなかで、悪化することもありました。
私がどういったときに悪化したか、また、回復がうまくいかない場合などについて、いくつか例を上げたいと思います。



管理人が悪化したとき

大脳指向型(BOOT)咬合療法を始めて1年ちょっとしたころ、私は散歩したり、繁華街で衣服を買ったりすることが、かなりできるようになりました。そして、そのころ、家の近くにある八百屋さんで、まるまるした美味しそうな大根が売られているのを見ました。
軽いシャツくらいなら買って帰れるようになっていた私は、かなり気が大きくなっていて、その大根を買っておでんにしようと思い、大根とバナナ一房、それからカボチャを半分買って帰りました。
八百屋の店先でそれらをまとめて持ってみて、ずしっと来るのを感じて、私は「かなり重い、やばいかもしれない」と思いましたが、買ったものをそこで捨てて行くわけにはいかず、なんとか家まで持ち帰りました。そして、その翌日から、私は呼吸をするだけで脇腹が痛むくらいの激しい痛みに見舞われました。
「後悔先に立たず」という言葉は、こういう場合のためにあるのだと実感しました。
激しい痛みは1ヶ月以上続き、2ヶ月目に入っても元には戻らず、大根を持つ前の状態に戻るまでに、7,80日かかりました。
一本80円の大根にこだわったために、私は治療が1ヶ月以上遅れることになったのでした。
私の場合、シャツとかジーンズなどの柔らかい素材で、身体にくっつけて持ち歩けるものの場合は、あまりダメージはないのですが、重く、固くて、それを持つと腕や肩、背中に負担が来るものは、その日か、翌日に、大きなダメージに見舞われることが、ままありました。


治療途中で無理することについて、医師は、「無理をしてはいけない。無理をすればよくなるものもよくならない。治るものも治らなくなる」と常に言っていました。
回復する途中の段階では、できるだけ無理をせず、身体が「重い、痛い、苦しい」と感じたら、なるべく早くその行動をストップし、椅子に座って休んだり、横になったりして、受けたダメージを回復させたほうがいいようです。
身体が「重い、痛い、苦しい」と感じることは、身体の感覚受容器への痛み信号入力につながり、[wind up]の現象を引き起こし、脳中枢が痛み感度を増大させ、結局は全身の痛みにつながるようです。(HPの「中枢感作」のページ参照)


治療によって翼突筋が回復するに従って、この[wind up]現象が収まり、その結果として、痛み信号の入力に対して、痛み中枢の暴走が収まってくるようです。

なかなか回復しない患者さんの場合

大脳指向型(BOOT)咬合療法でもなかなか回復せず、心配をして連絡をしてきた、私と同じ年頃の女性の患者さんがいます。
私も、ぜひよくなって欲しいのですが、なぜ現状維持からよくなっていかないのか、お話を聞いてみて、たぶん、治療でよくなった分の体力、回復した分の余力を、日々の活動に使ってしまっているからではないだろうかという感じを持ちました。


その患者さんは、私と違って化学物質過敏症が少なく、大脳指向型(BOOT)咬合療法と平行して、リリカを飲んでいるということでした。リリカは国内では未承認の薬剤で、個人輸入する必要があって、価格も高価なのですが、その患者さんの感じでは、今まで投与された薬と違ってリリカには痛みを抑える効果があるということでした。そして、BOOT療法によって、以前より身体を動かすことができるようになったので、リリカで痛みを抑えて食事の準備とか庭仕事をやっているということでした。

でも、大脳指向型(BOOT)咬合療法には、かなりの費用がかかります。その費用をかけても、患者さんは回復のために頑張っているわけで、治療の途中、回復の途中では、食事の支度や庭仕事よりも、治療によって回復した分の体力や、回復した身体の状態を、さらに大きな回復や、今後の治療に回すことのほうが大事ではないかと思います。

でも、重症になった患者さんの多くは、それまでいろいろなことを我慢し、やりたかったことも諦めて、とても辛い時間を過ごしているので、少しでも良くなってくれば、それまで我慢していた、さまざまなことをしたくなるのは当然のことです。

これは、回復してきた患者さんなら誰でも、必ず直面する難題だと思います。もともと線維筋痛症の患者さんは、人よりいろいろなことが出来たり、完璧主義者だったり頑張り屋だったりする人が多いのではないでしょうか。
苦しい闘病から回復してくると、さまざまなことができるようになってくるので、「あれもやりたいこれもやりたい」と、いろいろやって、せっかく回復してきた体力を、貯金しないで使ってしまう場合が出てきます。

かくいう私も、寝たきりからやっと、一日30分だけ起きあがれるようになったころから、まだろくに歩けもしないのに、1972年に放映されたドラマ「木枯し紋次郎」のブログを作って、原稿用紙で1200枚も書いてしまったり、(それまで何年ものあいだ、一行の文章を書くこともできず、文章を書けるようになったことが嬉しかったのだと思います。)また、このHPを作ったりして、Y医師には、「無理するな、無理すると治るものも治らなくなる。治療で回復した分以上の体力を使えば、この治療で回復させることはできない」と何度も言われました。

私の場合はそれでも何とか、回復した分の体力を貯金に回せたので、ここまでよくなってきたのだと思います。しかし、Y医師は、今もまだ私に同じことを言っています。
「無理をするな。昔と同じような馬力(昔はありました)で何かやったり、昔と同じような無理をしては駄目だ。この生活習慣とか癖を直さないと、また悪くする。また悪くなったら、もううちでは直せない」


治療をしても現状維持で、なかなかよくならないために、心配して連絡してきた患者さんに、私は、「よくなった分は、貯金に回して。今、家事とか庭仕事のために、引き出して使っては駄目。今の回復分は貯金して、将来、利息を受け取ったほうがいい」と言いました。よく考えると、これは、私自身が医師から何度も言われたこととそっくりでした。

回復した分の体力をすべて日常生活で使い、無理することが続けば、治療をしても、回復に向かうことは難しくなってしまうでしょう。私自身は、まだ翼突筋が万全ではないことを実感していて、それが完全に回復する前に、できる範囲を越えた無理するのは、自殺行為であることを感じています。

回復の途中にあるときは、自分が痛いとき、苦しいとき、辛いときには身体の声に耳を傾けて、自分にそれ以上の無理をさせず、苦しいときはよく休み、自分が楽しく、らくにできると思える範囲で、いろいろなことを楽しんでいけば、身体はゆっくりと回復していくのではないかと思います。

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